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有即無　無即有　有無即空　空即空　空空空　正空　（清水空雲）

随想　空即空（連載89）内村鑑三の最初の結婚と破局を巡って#ドストエフスキー＆清水正ブログ#

清水正

　鑑三はキリストの言葉をどのように受け止めるのか。鑑三はタケの軽率を嘘を姦淫を告発し厳しく責めるばかりで、そこに赦しと愛を感じることはできない。わたしはキリスト教徒ではないし、キリストの言葉をなんでもかんでも無条件に受け入れる者ではない。人間は嘘もつくし、卑怯なまねもするし、盗みも働く。そんな人間を共同体社会の中でどの程度許せるのかということが問題で、そのために法律がある。キリスト教のように罪に対して徹底的に厳しく処するというのは、人間を人間として扱っていないように思える。そもそも原罪を認めない者にとって、問題は〈罪〉ではなく〈ルール〉である。共同体組織の中でいくらかでも安逸な生活を望むのであれば、その時代に支配的な常識に基づくルールに従うほかはない。このルールから許容範囲を越えて逸脱する行為をしでかした者は、定められ法律に従って裁かれることになる。キリスト教は絶対的な唯一神に帰依するから、その神の命令に従うことになる。神の命令に反逆する者は徹底して裁かれ罰せられることになる。しかしキリスト教徒でない者にとって旧約の試み裁き罰する神と新約の愛と赦しの神は一致しない。否、決定的に異なっている。旧約の神と新約の神の矛盾を曖昧なままにしておいて、神に絶対帰依することなど狂気の沙汰としか思えない。少なくとも理性と知性を賦与された者に、矛盾だらけの神を信仰することはできない。その意味で、わたしはキリスト教の神を信じるに至った鑑三に根源的なところで疑問を抱いている。タケとの結婚、離婚に関しても、別にキリスト教の神などわざわざ持ち出すまでもないことだと思っている。先に記したように、要は結婚にあたって、鑑三はタケよりも母親の意思を優先したことが問題であり、離縁にあたってはタケよりも内村家を優先したということ、またそこには鑑三の〈大志〉（野望）が潜んでいたのであり、これらの問題はキリスト教に関連付けなくても理解可能である。もし関連付けるのであれば、鑑三はキリストの〈愛と赦し〉をタケに施すことができなかったということであり、むしろこのとき鑑三はキリストの敵対者であったパリサイ派に与みしたということである。

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