随想 空即空(連載59) #ドストエフスキー&清水正ブログ# 清水正

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随想 空即空(連載59) #ドストエフスキー清水正ブログ#

清水正

  わたしは現在、キリスト教徒と称する人間と実際に話したことはないし、キリスト教の教義に関して議論したこともない。わたしはドストエフスキー文学を通して神に対して考え続けてきているが、キリスト教の神を信じたことはないし、今後もないと思う。わたしは新約聖書を読んで、そこに〈人間イエス〉を見るが、〈神の独り子キリスト〉をみることはない。わたしは生きて〈ある〉こと自体に奇跡を感じる者であるが、聖書に書かれたイエスの〈ラザロの復活〉などを信じることはない。ハンス・ホルバインの〈死せるキリスト〉を見て、〈死〉を厳粛に受け止めることはあっても、それはイエスに限らない。わたしはドストエフスキーのようにイエス・キリストを特別視することがないから、彼を聖化することはない。率直に言えば〈人間救済のために十字架に上りしキリスト〉というイメージもほとんどない。まず〈人間救済〉という言葉に引っかかる。こういう言葉はどうも大袈裟過ぎるのである。

    わたしは『罪と罰』のソーニャに、ロジオンが口にしたように〈人類の全苦悩〉を背負った者を感じる。ソーニャは神の戒め「汝姦淫するなかれ」に背いて生きる娼婦である。キリスト教の教義に照らせば間違いなくソーニャは〈罪人〉である。ソーニャはなにも好きこのんで淫売稼業をしているのではない。アルコール中毒の父、肺病の継母、そして幼い三人の弟妹たちは、ソーニャの働き(罪業)なしでは生きていけない。ソーニャが神の戒めを守って正業に就いたとしても、とうてい一家の者を養うとことはできない。ソーニャは家族のことを思えば、自らを犠牲にしなければならなかった。この少女の苦しみは計り知れない。

 不思議だ。読者の誰もがソーニャの汚れた稼業に対してロジオンの疑問を共にする。なぜ河に飛び込まなかったのか。まさか淫蕩の味に溺れてしまったのか。ソーニャは自分を〈罪人〉に堕としてまで家族の暮らしを優先した。ソーニャは罪の意識に襲われながら、裁きの神ではなく赦しの神(キリスト)に縋った。ソーニャにとっての信仰は一度〈罪〉を受け入れた上で赦しを願うという必死の行為である。『罪と罰』の世界でソーニャは娼婦でありながら聖性を獲得している。『罪と罰』の登場人物の内、ルージンを除いたすべての者がソーニャに好意的である。

 わたしは、このソーニャが福音書中のイエスよりも〈キリスト〉に思える。ロジオン・ラスコーリニコフという二人の女を殺害した犯罪者ですら、一時とはいえソーニャの前に跪いている。ドストエフスキーは『罪と罰』で、キリスト以上のキリストを創出した、そう言っても決して過言ではないように思う。ドストエフスキーは、ソーニャという〈罪人〉を通してキリストを現出させた。わたしはそこに言い方は変だが、ドストエフスキーの隠されたキリスト教的野心の実現を見る。ドストエフスキーの〈キリスト〉は福音書中のイエスではなく、『罪と罰』の罪人ソーニャなのである。

 見ようによっては、ロジオン・ラスコーリニコフもキリストのイメージが色濃く刻印されている。注目すべきはソーニャ、ロジオン共に〈罪人〉(ロジオンは最後の最後まで自ら犯した〈犯罪=преступление)に〈罪=грех〉を見いだすことはできなかったが)であるということだ。

 キリスト教教義においてイエス・キリストは神から遣わされた独り子(人間)で、にも拘わらず〈罪なき者〉とされている。もう、わたしはこの時点で福音書中の〈イエス・キリスト〉を〈人間〉として見ることはできない。人間はすべて例外なく〈原罪〉を背負っているというのならば、〈イエス・キリスト〉もまた生まれながらに罪を背負った存在でなければならない。彼だけを例外として〈無罪〉というなら、もうこの時点でイエスは人間としてのリアリティを喪失し、幻想的な存在と化してしまうであろう。

 

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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