随想 空即空(連載19) 清水正

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随想 空即空(連載19)

清水正

 

    白鳥が鑑三の講演を熱心に聞き、鑑三の著作を熟読したと言っても、その内実は分からない。当時の白鳥が聖書を読んでいたといっても、何をどのように読んだのかは分からない。旧約新訳の膨大な聖書の一々に関して精緻な検証を試みていたはずはないし、もしそれをしていたなら洗礼は受けていなかったに違いない。洗礼という一大決意を促すものは、広範な知識や緻密な検証を必要とはしない。むしろそれらは洗礼を阻む要因となったであろう。信仰という背理的な行為は、知識が積み重なれば重なるほど困難となる。二十歳前後の白鳥には洗礼を拒むほどの神学的知識はなかったし、不信と懐疑も深くなかったのであろう。鑑三に対する心酔と熱狂を冷徹に見据える眼差しも獲得できていたとは言えない。

 白鳥のエッセイ、評論を読んでいると、対象に対する冷静で皮肉な眼差しを感じるが、同時にその地点に充足しえない、希求する精神を感じる。白鳥は冷徹な眼差しでとらえた対象を、飢渇の心で見直そうとする。信仰は精神の乾きを不断に感じている者にとって必要であり、知性と理性で把捉できる次元に満足する者にとっては不条理でしかない。白鳥は青年期に〈洗礼〉という〈不条理〉を一度は受け入れた男であり、物書きである。評論という知的作業を忠実に続けていれば、そこに〈信仰〉という不条理がつけ入ってくる余地はない。

 白鳥の文章は、ぬかりなく〈信仰〉の進入を拒む外壁を作り上げている。がしかし、この外壁を恥も外聞も撤去してすまし顔をしているようなところがある。前言を翻しておきながら、弁解釈明はいっさいしないという、これを厚顔無恥と見るかしゃい(含羞)と見るかは読者や評家の自由だが、白鳥が文芸評論家としても一家をなしている物書きである以上は、納得のいく説明をする義務はあっただろう。そんな万人が納得のいく説明ができるなら誰も苦労しないし、そんなところに文学が成立するわけはない、という声も聞こえてくるが、しかし聖書を〈凡書〉と天下の読売新聞に発表しているのだから、当然〈凡書〉を呼んで〈洗礼〉を受けた理由は明確にしなければならないのが筋だろう。

 棄教してから後も絶え間なく聖書という〈凡書〉を読み続け、死の間際になってキリスト教に復帰する運命にあった白鳥は、七十歳になって書いた「内村鑑三」においてすら、〈洗礼〉と〈棄教〉に関して納得のいく説明をすることはなかった。白鳥は〈洗礼と棄教〉の秘儀を彼一人の精神舞台で繰り広げ、それを観客の前に披露することはなかった。白鳥にとってこの〈洗礼と棄教〉の秘儀は、おそらく彼自身にとっても説明のつかない秘儀であり、ワルコフスキー公爵の言葉を借りて言えば〈秘中の秘〉だったということになる。わたしが正宗白鳥について書こうと思った一つの動機は、この白鳥における〈秘中の秘〉に照明を与えたいと思ったことにある。わたしは執拗に、繰り返し、この問題を巡って感想をもらすことになろう。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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表紙

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