文芸批評の王道    夏目漱石から清水正へ 連載5此経啓助

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挨拶する此経啓助氏

2018年11月23日 「清水正ドストエフスキー論執筆50周年記念 清水正先生大勤労感謝祭」第一部「今振り返る、清水正先生の仕事」(日大芸術学部資料館に於いて)で挨拶する此経啓助氏(元日芸文芸学科教授)

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自宅(清水正D文学研究会)の住所名が昨年下記のように変更になりました。

〒270-1151 千葉県我孫子市本町3-6-19

 郵便物などはこの住所宛にお送りください。

 池田大作の『人間革命』を語る──ドストエフスキー文学との関連において──」

動画「清水正チャンネル」で観ることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=bKlpsJTBPhc

 

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清水正の著作はアマゾンまたはヤフオク

https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208で購読してください。

日芸生は江古田校舎購買部・丸善で入手出来ます。

 清水正への講演依頼、清水正の著作の購読申込、課題レポートなどは下記のメールにご連絡ください。
shimizumasashi20@gmail.com

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これを観ると清水正ドストエフスキー論の神髄の一端がうかがえます。日芸文芸学科の専門科目「文芸批評論」の平成二十七年度の授業より録画したものです。是非ごらんください。

ドストエフスキー『罪と罰』における死と復活のドラマ(2015/11/17)【清水正チャンネル】 - YouTube

ドストエフスキー曼陀羅」9号に掲載した此経啓助氏の原稿を連載します。

文芸批評の王道
   夏目漱石から清水正
 連載5

 
此経啓助

おわりに
  近年ベストセラーとなったトマ・ピケティ著『 21 世紀の資 本』は、数字データの少ない過去の経済状況を読者に理解し てもらうために、同時代の古典文学作品から金銭の価値や貧 富の格差などを描いた場面を巧みに引用している。たぶん多 くの読者の印象に残った作品は、バルザックの『ゴリオ爺さ ん』だろう。バルザックは周知のように、 19 世紀前半のフラ ンスを代表するリアリズム作家だ。それこそ「世界文学」全
集の要の作家だが、この小文でいう「世界文学の地平」に登 りつめた。
  「世界文学」の作家たちは、「世界」(バルザックならば「生 活世界」)のすべてがよく見えている。私たち読者がそれを 知ったとき、「微にいり細にいり、よく描けている」という。 しかし、たとえば清水先生が「解体」しようとする場面は最 初、読者には細かすぎて、あるいは物の陰に入ってよく見え ない。ピケが引用した場面を読んでいたにしても、「ゴリオ 爺さん」が人生の達人であることに気がつけないように。清 水先生はそうした場面を巧みに「再構築」することによって、 場面の「微に入り細にいり、よく描けている」真の姿を私た ちに見せてくれる。
  「世界文学」の小説家や批評家は、「世界」の時空を「パー スペクティヴ」(作品の場面)で瞬時に切り取る。映画フィ ルムの一場面のように。読者はそれが二六コマで回転してい る事実を教えられなければ知らない。その仕組みを教えるの が「理論」ならば、その一コマに写し出されたもの(ミメー シス)を教えるのが「哲学」だろう。漱石が「文学論」によっ て前者に力を傾注したとすれば、清水先生は「解体と再構築」 批評によって後者に五〇年の歳月を注いできた。漱石は「文 学論」を立脚点にして、「世界文学」執筆にカーブを切ったが、 二人は文芸批評の王道のスタートライン(「文学」とは何か への問いかけ)を同じにし、決して道を踏み迷わなかった