此経啓助・「クークークー」とは(連載2)


https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk

これを観ると清水正ドストエフスキー論の神髄の一端がうかがえます。日芸文芸学科の専門科目「文芸批評論」の平成二十七年度の授業より録画したものです。是非ごらんください。

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新刊本の紹介
清水正ドストエフスキー論全集』第10巻(2018年3月25日発行 D文学研究会)の栞原稿を紹介します。今回は宗教考現学研究者・日大芸術学部講師の此経啓助氏の文章を数回にわたって紹介します。
マサシ外伝

此経啓助

「クークークー」とは
 
中村光の漫画『聖おにいさん』が立川のアパートに暮らす
ブッダとキリストのフィクションで知られているが、我孫子
都市伝説は即禅師と正空聖人と名乗る二人の老いた仏教僧が夜
我孫子の街を激論しながら歩いている、というリアルな目撃
談だ。話を伝えてくれた編集者は柏の隣の北小金に住んでいる
が、実は彼に最初にその目撃談を伝えたのは我孫子に住んで
いる漫画批評家だった。漫画批評家自身は目撃していないが、
酔って清水先生のマンション近くの路地をふらついていたとき、
暗い横丁から老人の声で「クーソククー、クークークー」とい
うのが聞こえ、「早く食えよ、さあ食え食え」と言っていると
思って通り過ぎたことがあったという。その後、我孫子のス
ナックや飲み屋で飲んでいると、酔客が彼の聞いた「クークー
クー」をよく話題にしている場面に出くわした。それらを総合
すると、暗闇の老人には相手がいて、しかも食べ物の話でなく、
仏教について議論しているらしい。さらに、話をまとめること
の上手な編集者に打ち明けて、話をこう整理した。私はそれを
編集者から聞いたのだ。
 
話は即禅師と正空聖人がたまたまどこかで清水先生の発行
する「Д文学通信(1426号)」を手にしたところ、文中に
「有即無  
無即有  
有無即空  
空即空  
空空空  
正空」という
お経とまぎらわしい文句を発見して、文句を付けていたのを住
人が目撃したことから生まれたらしい。先生の文句はいわば哲
学的覚え書きだが、一方、二人の老僧の文句付けはいわば仏教
的注釈のようなものだ。議論は仏教の門外漢にはチンプンカン
プンで、二人が「末法の時代が終わって、現代は無法時代だ。
そんなときに、マサシ(伝聞のまま)はこんな仏教を誤解させ
るチラシを配って、凡夫をさらに混乱させるつもりか」と叫ん
でいたらしいが、これなぞは先生を非難しているのでなく、激
賞しているようなものだ。以下、二人の仏教談義をなぞってみ
た。