此経啓助・マサシ外伝(連載1)




https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk

これを観ると清水正ドストエフスキー論の神髄の一端がうかがえます。日芸文芸学科の専門科目「文芸批評論」の平成二十七年度の授業より録画したものです。是非ごらんください。

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新刊本の紹介
清水正ドストエフスキー論全集』第10巻(2018年3月25日発行 D文学研究会)の栞原稿を紹介します。今回は宗教考現学研究者・日大芸術学部講師の此経啓助氏の文章を数回にわたって紹介します。
マサシ外伝

此経啓助



我孫子の都市伝説
 
清水正(マサシ)先生は談論を肴に飲み会をよくもつ。大学
の出講日に合わせて、例えば、金曜日に開く「金曜会」は講師
の漫画家や文芸批評家たちと江古田の中華料理店で侃々諤々を
愉しんでいる。私は出講日が異なるので、なかなか参加できな
い。やさしい清水先生は互いの住まいが近い常磐線柏駅近辺
で飲み会をときどき設定してくださった。漫画批評家と編集者
の、私たちより一回り若い先生の友人を誘って、いつのまにか
「柏会」と名乗っている。柏には太平書林という年中無休、安
価、良質の古書店があって、「柏会」はそこで落ち合って近く
の大衆酒場に向かう。
 
あるとき、先生の病気(帯状疱疹後の神経痛)を気遣って、
先生の住まいに近い我孫子駅で「柏会」を開いたことがあった。
私は我孫子に五〇年ぶりにやってきたせいか、我孫子というよ
り先生の土地に降り立ったような気分だった。そこには常に宇
宙と拮抗している深遠な思想の持ち主・清水正を生み育てた地
霊と、先生の強烈な思考の磁場が強く感じられた。我孫子では
先生がらみの奇怪な現象が起こっても不思議じゃない。私は暗
い駅前ロータリーに立って思った。
 
それからしばらくして、私は柏の古書店で「柏会」の若い編
集者と偶然会って、その我孫子での体感を一層強めた。という
のは、編集者が私に話した我孫子で最近噂される都市伝説がそ
の理由なのだが、伝説はまさしく先生がらみの奇怪な現象で満
ち溢れており、私の体感を裏付けてくれた。