星エリナのほろよいハイボール(連載81)

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星エリナのほろよいハイボール(連載81)


ボーダーは避ける
星エリナ

 
懐かしいものを見たくなる
星エリナ

 今日も今日とてシューカツ。自己分析をもとに、この会社で私は活躍できるかを模索している。今日はとある企業の説明会だった。朝は6時に起きて8時の電車に乗る。満員電車からはなぜかカップラーメンの匂いがした。
 急いでいるのに緊急停止されて女子大生に寄りかかられ、新聞を読んでるおじさんは朝からイライラしていて宙を睨んでいた。今までは利用することもなかったような丸ノ内線にも慣れて、人間観察をする余裕ができてきたようだ。
 説明会会場の入口で受付をする。たまたま私の前で受付をしている女の子に目がいく。ふっくらした体型でくりんくりんの天然パーマを一つに結んでいる。あれ、あのくるっくるな髪の毛見たことある。受付を済ませ私もその女の子の後ろを着いていく。そして席に順番に座る。当たり前だけど隣。そこで横顔を盗み見る。
 やっぱり見たことがある。小学校と中学校一緒だった友達だ。しかも中学は三年間一緒に登校する仲。会場が静かだったので小さく囁くように、「久しぶり」と言ってみた。しかし、彼女はとても緊張しているのか、「あっすいません」と席を詰めてくれた。私の顔は見ていない。えっまさかの人違い? いやいやそんなことない。本当に友人。でもしょうがない。静かな会場で何度も話しかけるわけにもいかず、帰りに声をかけようかと思っていた。
 説明会がスタートし、本日のスケジュールをスライドで説明された。なんと一番最初にアイスブレイクとして自己紹介をしようと、書いてある。横の人と向かい合って簡単に自己紹介。横の人……。
「それでは一分間の自己紹介スタートです」
 そう言われた瞬間に目が合う。
「え!? あれ!?」
 私に気付いていなかった彼女はかなり驚いていて、私はその反応がわかっていたので笑ってしまった。
 帰り道にお互いシューカツは順調か、という話になる。彼女は教育学部へ進学したが、現代社会で教育なんてしたくない、と思ったらしく普通にシューカツをしている。
「最近、現実逃避がしたくて一人旅に出かけたいんだよね」
 と私が言うと、彼女も現実逃避を希望しているらしい。「懐かしいアニメとか見て、昔を思い出してるんだよね」と言われた。私も同じで、中学生のころハマっていた西遊記のアニメを見ていると言った。すると彼女は、
「私いま、地獄先生ぬ〜べ〜見てる」
 え、ぬ〜べ〜? それっていつ放送していたアニメだっけ? 私たちが生まれてすぐくらいだよね。どうやら彼女と私の懐かしいには少しタイムラグがあったみたい。


 

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