ユッキーの紙ごはん(連載40)

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ユッキーの紙ごはん(連載40)

 【過去の自分と目を合わせられない】



ユッキー


 


 飲み会の次の日、その飲み会が下卑た話で構成されていたものであったら尚更、私の脳は著しく劣化しくだらない思考を繰り広げる。

 劣化した脳では就活の情報収集も気合が入らないので、とりあえず軽いものを読もうとインターネットでコラムを読んでいたら、フラダンスを推奨する記事があった。
 そこに書かれていたのだけれど、フラダンスの音楽の歌詞は、なかなかエロチックな意味が隠されているらしい。

 たしかにフラダンスって動きからしてセクシーだもんなあと納得しつつ読み進めると、フラダンス発祥の地であるハワイでは性的な行為を素晴らしいものと捉えられていたが、白人に支配されたことによってそういった意味を直接的に表現できなくなり、別の言葉の裏に隠さなければならなくなったと書かれていた。たとえば、「雨」 や 「海の波しぶき」 といった言葉に換言していたらしい。

 白人に支配されたという歴史自体は非常にシリアスなものだろうからこんなことを言うと不謹慎かもしれないけれど、正直ちょっと面白い。

 だってこの話、白人さんが

「おい! 今お前たち、またスケベな歌を歌っていただろう! 禁止したはずだ!」

 と怒ったら、ハワイの人たちは

「してませ〜ん。雨の話してただけですぅ」

 と言い返せるという意味ですよね。

 白人さんが 「白々しいことを! 絶対にスケベな歌だった!」 と問い詰めても、ハワイの人たちには 「してませんってば〜。ねえ?」 「ねー。雨とか海ってありがたいなーって話だよねー。白人さんはどんな意味に聞こえたんですかあ?」 とクスクス笑われてあしらわれてしまったのかもしれない。

 何も言い返せなくなった白人さんは仲間のもとに帰って、「あいつら絶対エッチな話してたもん! エッチな話してたもん!」 と悔し涙を浮かべながら怒りを吐き出したのかもしれない。

 ……と、くだらない妄想をして一人ニヤニヤしたところで、前日の飲み会の記憶が蘇ってきた。みんなして22歳にもなって中学生のような下ネタで盛り上がるのだから、つくづく類は友を呼ぶという諺を実感する。

 飲み会をした友人達は、ハワイ人と違って誰にも支配されてなどいないくせに、性的な話をあえて濁して楽しんでいた。
「彼女のシークレットフラワーガーデン……CMGがね?」 と語っていた男が (正しく略するならSFGだがアルコールによって思考能力が低下しこのような発言に至ったようだ) 、来月から教員になり真面目な顔して生徒達を指導するのかと思うと、大人の世界の汚さに呆れるのを通り越して、人間という生物の愚かさという偉大なテーマを感じてしまう。

 そしてこんなエッセイを書いている私も、来週には企業の面接に赴き 「私にはとっても真面目です!」 と言いたげな顔をいけしゃあしゃあとやってのけるのだから、まったく他人なんて信用するもんじゃないと思う。





 

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