小林リズムの紙のむだづかい(連載249)

小林リズムの紙のむだづかい(連載249)
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小林リズムの紙のむだづかい(連載249)
小林リズム
 【はじめてできた先輩の顔を知らない】


   

  小学校のころ、家の近くに浸水公園があった。公衆トイレと、芝生と、木で作られた机と椅子、それから池しかない小さな公園だった。幼いころはよくそこで集まって鬼ごっこをしたりお菓子を食べたりして遊んでいた。
 柔らかい木材でできている机は、風化されていてぼろぼろだった。もとの色がわからないくらいにマジックやボールペンで書かれた落書きや文章に埋め尽くされていて、なんともまあみすぼらしい汚い机だったのだ。
 机のどの部分にも落書きの上に新しい落書きが書き足されているような状態で、何が書かれているのかを読み取るのさえ難しかった。下品な用語や、出会い系のコメントのような台詞はなかでも目立っていて、けれど子どもだったからよくわからなかった。
「3万円でやらせてくれる人は××-××××-××××に連絡してください」
というようなものを見つけては「なんのことだろうねぇ?」「さんまんえんだって!」と幼馴染や地元の友達と首をかしげていたのだ。

 そんななか、机の脚の部分に太いマジックで書かれたコメントがあって、それは今でもよく覚えている。

『一度しかない人生だろ くだらない大人になるなよ』

角ばった自体で、ぎゅっと渾身の力を込めて書いたような力強さがあった。なんだか卒業式に学校の机に掘り起こすような、かっこいい文章だと思って、えらく感動した。そのときわたしはまだ一ケタの年齢だったけど、この「一度しかない人生」という壮大な言葉に魅せられ、「くだらない大人になるなよ」という教訓に胸をときめかせた。「先輩」というものをはじめて明確に意識したのがそのときだった。それは、年齢も顔も性別もわからない、けれど確かに「わたしの人生の先輩だ」と思った。だから覚えておこうと思って、行くたびに必ず一回は見て心のなかで唱えていた。「一度しかない人生だろ くだらない大人になるなよ」―。先輩は何を思ってここに書き残したのだろう。ここに来る小さな子たちのことを思い、自分を律することも含めてマジックで目立つ場所に書いたのかもしれない。先輩の願い通り、この言葉に揺すぶられた小さなわたしがいると思ったら、通じた気がした。

 さて、このことを思い出したのはつい最近だ。今までずっと忘れていた。けれど心のどこかにはいつもあった。あれから軽く10年を超えた月日が流れたけれど、そうしてわたしは子どもから「大人」になったれど、くだらない大人になろうとしてはいないだろうかと、時々考える。答えは出ない。もしかしたら、もしかしなくても「ダメな大人」ではあるんだろうなぁ…。でもまあとりあえずは「一度しかない人生」を意識して生きているつもり。だからありがとう、先輩!

 

 

 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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