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「清水正・批評の軌跡──ドストエフスキー生誕200周年に寄せて」展示会の感想を何回かにわたって紹介します。(連載9)
【13】
「貪欲+軸=熱情」
表現に対する情熱。それを維持していくためには徹底的に物事を突き詰めていきたいという「貪欲さ」が必要である。表現をする、ということはすなわち自分の哲学や思想、またそれを元にした自己の世界を対外的に示すことだ。それが創作活動の源泉だといってもいい。逆に言えば、それが無ければ表現に対する情熱どころか創作さえ出来なくなってしまう。当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれないが、自分の中にそれらを持ち続けることはなかなか難しい。
しかし、それら源泉を持ってしても、時には情熱を失いかけることもある。人間は複雑な感情に支配されているせいか、一貫性を持つことが難しい。そこで必要となってくるのが貪欲さである。これはいい意味でも悪い意味でも使われる語だが、どちらの意味でも貪欲でいることが情熱を持ち続けられる唯一の道だ。
今回の展示を拝見し、清水正先生はまさにこの貪欲さを持ち合わせた人物だと感じた。そうでなければ五十三年もドストエフスキーという一人の男について考えるなんていうことは出来ない。ただ、並べられた彼の著作を辿るうちに、彼の強みはそれだけでは無いことに気がついた。それは「軸」である。もちろん、ドストエフスキーに対する研究、殊に『罪と罰』という作品に数多の時間を費やしてきたことは周知の事実であるが、その貪欲さに加え、彼の中にその男という軸が根を張ることで、他の様々な分野での研究に繋がっているのだと気がついた。それは漫画作品や他の著名な作家の作品など多岐に渡る。中には我らが日芸の創設者、「松原寛」についての書籍も残しているほどだ。
表現に対する情熱を語る上で松原寛という男に触れずにはいられない。彼はまさに「貪欲さ」と「軸」を持ち合わせた人間だったからである。彼は『哲学の門』などの著書にもある通り、独自の芸術観や人生観を持っている。その言葉は少々強いものもあるが、不思議と嫌味は感じない。彼は決して真面目であったとは言えないが、どこか人を惹きつけてしまう、現代で言うところのカリスマ性があった。それは幼い頃は学問や宗教に、そしてその後は芸術に対して貪欲になっていたからではないか。つまり、彼の人生において「貪欲さ」がひとつの「軸」であったのだ。もちろん、彼の人生には様々な苦難も襲ったが、それでも立ち向かっていくことが出来たのは、このひたむきに探求していく貪欲さ、そして軸を貫き通す熱情があったからなのではないだろうか。
私自身は、まだそうした貪欲さや軸、そして熱情を抱けていないと思う。少なくとも彼ら二人ほどは。ただ、書くことを続ける目的ははっきりと言うことが出来る。人生は短いようで長い。これからの未来を生きる中で、そうした熱量を向けることのできる対象が見つかったのなら。それほど幸せなことはないだろう。一生をかけて表現を追求できるという恵まれた環境におかれた私たちは、それを決して諦めてはいけない。先駆者たちのように、熱情という火が心の中で燃え続けていなくてはならない。
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動画撮影は2021年9月8日・伊藤景
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