帯状疱疹後神経痛と共に読むドストエフスキー(連載21) 師匠と弟子
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師匠と弟子
マルコは何者かである前に、語りの機能である。マルコはイエスの内部に侵入しない。『罪と罰』の語り手がラスコーリニコフやスヴィドリガイロフの内部深くに侵入して、その世界に隈無く照明を当てたようにはマルコはその機能を発揮しない。マルコは自らの運命に脅え嘆く人間イエスの心理心情に限りなく身を寄せるようなことはしない。マルコは人間イエスに神の子の衣装を着せたものを完璧に拒むことはない。人間イエスに対して人間マルコが正面切って対面することはない。
が、マルコ福音書には人間イエスの真実を伝えようとする不屈の意志を感じる。マルコは裏切り者ユダを、裏切り者ペテロのありのままの姿を伝える。マルコはイエスの内部に侵入しなかったように、裏切り者ユダとペテロの内部に立ち入ることはない。マルコが伝えるのはユダとペテロの裏切りの事実の姿である。ユダの裏切りは師イエスを敵の側に売り渡すことであった。ユダはなぜイエスを裏切ったのか、マルコはその理由に対していっさい説明しない。
マルコ福音書を読む限りにおいて、ユダは最後の晩餐において名前さえ出されなかったがイエスによって〈裏切り者〉として扱われている。この時、ユダがどのような思いであったのか、マルコは微塵も注意を向けない。マルコは裏切り者ユダの心理心情を完璧に無視する。無視されたユダの存在に余すところなく照明を当てようとするのは批評の眼差しである。
ドストエフスキー文学に関心のあるひとはぜひご覧ください。
「清水正先生大勤労感謝祭」の記念講演会の録画です。
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「池田大作の『人間革命』を語る──ドストエフスキー文学との関連において──」
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これを観ると清水正のドストエフスキー論の神髄の一端がうかがえます。日芸文芸学科の専門科目「文芸批評論」の平成二十七年度の授業より録画したものです。是非ごらんください。
ドストエフスキー『罪と罰』における死と復活のドラマ(2015/11/17)【清水正チャンネル】 - YouTube