ユッキーの紙ごはん(連載49)

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ユッキーの紙ごはん(連載49)


【僕の可愛い子猫ちゃん (推定12歳) 】



ユッキー


 
 ペットに性的な可愛さを感じるという話を聞いたことがある。
 ふわふわのお腹を撫で回され恍惚とした表情を浮かべているところや、お尻をツンツンされて目を丸くしているところ、甘えた声を出しているところなどを見ると、ただ可愛いというだけでなく 「エロかわいい」 と感じ、何ともたまらない気分になるんだそう。

 その人は女性だったが、「男が好きな女を見ているときの気持ちはきっとこんな感じ」 とのことだった。

 私もペットを飼っている。小学4年生の頃、もともと犬派で子犬を飼う予定だったのに猫を拾ってしまった。しかもテレビに出てくるような 「チョーカワイイ子猫」 ではなく、もう子猫終了期にあるくらいの大きさになっていた。
「しかも」 ともう一つ悪口を付け足すと、可愛くない性格の猫だった。妙にビクビクしていて、人が呼んでも隅からじっと見てくるだけ。膝に乗ってくるなど絶対にしない。気が弱く、鳴き声を出そうと口を開けるも声が全く出ていない間抜けっぷり。

 飼い猫の悪口なら、まだまだ、いくらでも書ける。つまりそれくらい可愛くて仕方ない。世界でいちばん良い猫を飼っているとすら本気で思う。

 私がまだ小学生のうちに猫が発情期を迎え、非常に嫌だった。
 可愛い可愛い私の猫が甘ったるく鳴きながら苦しそうにお尻をそこらじゅうに擦り付けている姿に、子供ながらに深く傷付いた。大人になった今でも二度と見たくない。

 だからペットをエロ可愛く思う、恋人を見る男のようにペットを思う人の気持ちが全くわからない。発情期のときの猫を思い出すこの嫌悪感と悲しみは、恋人に対するものでなく、きっと子供に対する親のような気持ちだ。

「彼氏とそういうことをしてもいいけれど、お父さんお母さんにそれを気付かせないのがマナーだよ」

 私にそう言ったのは、私の父と仲良くしている男性だった。
 自分の子供も年頃になれば「子供」ではなくなると頭ではわかっていても、その事実に直接は触れたくないのだろう。

 ところで可愛い私の猫は、ここ数年になってなぜか寂しがりやになった。隅っこでじっとしていた気弱さはどこかへ行き、私の後を追い掛け回し、姿を見失うと大声で鳴きわめくようになった。どこへいった、かえってこい、と言わんばかりに。

 お手洗いやお風呂、あるいは自室に行くと、狭い家中に響き渡るような猫の声。
 常に私の傍にいたいと思ってくれているその気持ちは嬉しいし、愛おしい。

 だけどちょっと毎回はうるさいし、うんざりすることもある。だからといって嫌いになるわけでもない、可愛いは可愛い。でもやっぱり、うるさい……。

「恋人を見る男のような気持ち」 。
 なるほど。猫の悲鳴を聞きながら、一人納得する。

 重い女を恋人に持つ男の気持ちって、こんな感じなのかもしれない。




 

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