小林リズムの紙のむだづかい(連載176)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
清水正の著作はここをクリックしてください。

http://d.hatena.ne.jp/shimizumasashi/searchdiary?word=%2A%5B%C0%B6%BF%E5%C0%B5%A4%CE%C3%F8%BA%EE%CC%DC%CF%BF%5D

ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/


四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp



清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/


小林リズムの紙のむだづかい(連載176)
小林リズム

【「俺なんてどうせ死ぬし」と言う君に貸した恩なら山ほどにある】
 
 
煙草を吸うのがまるでサマにならない人だった。火を消すときも中途半端に煙が出ている状態のまま灰皿に置く。ゆらゆらと宙に消えていく煙を見ながら、ああ、この人ってやっぱりだらしないな、と思った。これは聞いた話なのだけど、煙草の火の消し方には性格が出るらしい。灰皿にトントンと何度も叩く人はしつこい性格。一度だけひねりつぶすようにして灰皿に押し付けて消す人は強引で自分勝手な性格。と、いろいろと言われているのでわたしは喫煙者がいるとついつい消し方に注目してしまうのだった。そうしてみると、ほどよい長さで吸うのをやめて、気づかないくらいにスムーズにぱぱっと後始末をしてしまう人ってなかなかいない。

 「死のうと思うんだよね」
と言うのでわたしは絶句した。びっくりしたというより、呆れてしまった。彼の生気のない表情は見慣れたけれど、それにしたって死ぬための気力すらこの人にはないのではないかと思う。彼の辞書に努力という文字はほんの少しも存在しない。傷つく道を徹底的に避けてきたおかげで失敗することは少なく、そのせいで自信がないけどプライドも高い。経験のなさゆえ、自分を過信しすぎている。先手を打って謝ることは得意。自分が悪いと自覚していますよ、ということをアピールしたいから。人にへりくだって気に入られることも得意。嫌われなくてすむから。そういう姿が自分とまるかぶりだったから、わたしは彼といると必要以上にきつい女になるのだった。それでも強烈に「死んでほしくない」と思った。
 今まで積み重ねてきた小さなことの全部。お茶を奢るだとか友達を紹介するだとか嘘がバレないための口実をつくったこと、そういうもろもろの貸しを死んでチャラにしようとするなんて許せない。取るに足らないどうでもいいこと、みたいな扱いにしてすっかり忘れて死ぬなんて勝手すぎる。貸した恩に対してあまりにも、割りに合わないではないか。悔しくなって俯いたわたしに「嘘だよ」と彼は笑ったけれど、この人はわたしがなぜ俯いたのかきっと一生わからないだろうなと思った。

 ばかだなぁ。あらゆることから逃げ続け、最後の逃げ場が死ぬしかないと思うなんて。死ぬということへの努力さえ面倒くさがってしないことがありありと浮かぶ彼に、わたしがこんなことを考えているなんてちっとも気づかないはずだ。恩を返してもらうまで、わたしは彼を絶対に死なせない。 

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
http://ameblo.jp/nanto-kana/

twitter:@rizuko21


※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。