星エリナのほろよいハイボール(連載20)

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星エリナのほろよいハイボール(連載20)

 サックスに憧れた


 
 中学一年、吹奏楽部に入部を決める。一年生のはじめは、楽器決めからはじまった。パートめぐりといってすべての楽器のパートをめぐり、合う楽器を探すのだ。はじめて触れる楽器、吹き方がわからないと、音すら出ない。フルート、クラリネット、サックス、ホルン、トランペット、トロンボーン、ユーフォ、チューバ、コントラバス、パーカッション・・・。
 全部音がでた。全部ドレミファソラシドの音階は出せた。あれ、ということは私、どの楽器になるの? 適性を見るはずが、別にどれでも大丈夫みたいな結果。あー、またあれか。最初のうちは出来ちゃうやつ。まぁ、実際そのとおりだった。そのうち成長しなくなって、つまらなくなってさぼるやつ。
 とにかく最初のパート巡りだけでは、私の楽器は決まりそうにない。全員がパート巡りを終えると、紙に希望の楽器を書く。この希望と適性を見て、楽器が決まる仕組みだ。私は正直どの楽器でもいいと思った。実際吹けちゃったし。でもちゃんと希望は書かなきゃいけないので何か書こうと思う。当時私が知っている楽器、トランペット、サックス、フルート。そのなかでも、サックスが好きだった。当時読んでいた少女漫画の主人公が、サックスだからだ。単純でしょう。
 とにかく第一希望はサックス。次にトランペット、フルート。知ってたからね。そんなテキトーな希望書を出した次の日。私は先生に音楽準備室に呼び出された。なんだろう。テキトーだったことバレたのかな。いやいやいや、バレるわけがないよね。じゃあなんだろう。制服のスカート短いとか? 全く理由がわからないまま向かう。音楽準備室には先輩が一人、先生が一人、一年生があと二人いた。
クラリネットふける子が少ないのよね」
 パート巡りでクラリネットを吹けたのが私とあと二人だけだったようだ。クラリネットは重要なパートだし、いないと困るのよね。という理由により呼び出され、もう一度ここで吹いてみろ、と言われた。え、クラリネット? あれでしょ、童謡にあるよね。パッパッカッラッモッラッタクラーーーリネット。あれって音でなくなっちゃうんでしょ? そんなのいや!
 とにかく吹けと言われて三人並んでクラリネットを吹かされる。どうしよう、吹けなくなっちゃったーとか言おうかな。と思いつつ咥えるだけ咥えていた。だって、私サックスがいいし。そうこうしているうちに、一人吹けた。ちゃんと音階もできてる。その子を見て気を抜いていた私。呼吸をしただけで音が出てしまう。
「音出たね!」
 先輩は私を見逃してくれなかった。あー、出ちゃった。もう一人の子は本当に吹けなくなっちゃったみたいで、マウスピース(楽器の咥えるところ)の脇からふーふーと息が漏れている。クラリネットパート、二人はほしいよねっていうことでこの日、音楽準備室で音が出た私ともう一人の子がクラリネットパート即決定。他の子たちのパートはこれから決めるらしい。
 こうして私は中学三年間、クラリネットパートに所属した。これが運命の分かれ道、というかなんというか。ボロボロ泣きながら家まで帰ったり、生徒会室でおさぼりしたり、私のお気に入りベストプレイスで仲間と泣きながら別れたり。波乱万丈な中学生時代はクラリネットパートからはじまったのかもしれない。

 


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