小林リズムの紙のむだづかい(連載143)

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紙のむだづかい(連載143)
小林リズム

【夏の終わりに】
 
  ソフトクリームを大事そうに持っている兄妹を見かけた。ふたりとも嬉しそうににこにこしていて、年相応にかわいらしかった。いいなぁ、わたしにもああいう頃が…なんて思っていると、妹のほうのソフトクリームの持ち方がままならなくて、ついにはアイスが傾いて道路にべちゃんと落っことしてしまっていた。「ああ!」とこの世の終わりみたいな声を出すお兄ちゃん。瞬時に泣き出す妹。いいなぁ、と思った。意地悪な気持ちでなくて、単純に彼らが羨ましかった。

 22歳になったわたしが道路でソフトクリームをぶちまけたらどうするか、を、考えてみた。とりあえず何事もなかったような顔をして放置して歩き去るとか、「やだ〜」なんて小さく独り言をいいながらパパッと片づけて去っていくか。どちらにしても純粋に悲しむことなんてできない。楽しみにしていたアイスがもう食べられない、という悲しみを直球で食らうには、年をとりすぎている。間違っても「アイスが落ちちゃったよー」と泣くことは許されないし、できない。もしどうしてもまたアイスが食べたいのなら「あーあ。また買えばいっか」と思えるくらいには大人に、便利に、図太くなっているのだった。生きやすさが素直でいることを奪う、自由なのか不自由なのかちっともわからない。

 この年になってやたらと「まあ、それが大人の対応ってやつでしょ」なんて言われたり聞いたりするようになったのだけど、そのたびに抜けそうな乳歯をぐいぐいと無理やり歯茎に押し付けたいようなチクチクとした感覚に襲われるのだった。わかる、わかるよ、大人だから大人らしくふるまわないといけないことくらい。セキニンとリョウシキのある大人になるには、そういうジカクが必要だってことくらい。
 今まで「子どもだから」「学生だから」という理由で許されてきた恩恵がたくさんあるのだけど、それらをすべて忘れたみたいに棚にあげて「大人を理由にするなんて」と思ってしまうのだった。そしてたぶん今も「まだ若いから」という理由で妥協されていることが山ほどあるというのに。大人を理由にしたくない。自分が好きだからやっていると思いたい。仕事も、我慢も、礼儀も、すべて。

 と、そんなことを考えながら、スーパーでスイカを買ってうきうきしていたら、帰り道に落として割れてしまった。4分の1にカットされたスイカにたやすくヒビが生えてしまって内心とてもショックを受けたのだけど、「もう大人なんだから」と余裕ぶって割れたスイカをビニール袋に入れなおしたのだった。大人なんだからこんなことで悲しんではダメだと律する気持ちと、大人だから割り切れてよかったという安堵の気持ち。ずいぶんとややこしい大人になったなぁと思うのだった。 

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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