小林リズムの紙のむだづかい(連載149)

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紙のむだづかい(連載149)
小林リズム

【お父さんの会社が倒産しました】
 
 「お父さんの会社が、倒産しちゃった」
というドラマに出てきそうな台詞を電話越しに母から聞いたのは、18歳のクリスマス前だった。わたしにとって上京してはじめてのクリスマス。恋人もいないし「寂しい女で集まろうかー」と友達の家でクリスマス会を開くことになっていたのだけど、どうやら寂しいどころの騒ぎではないらしい。
 高校2年生の弟は大学受験を控えているし、わたしだって決して安くはない学費を払ってもらって学校へ通っているし、けれどそういう現実的な実感なんてちっとも湧かなくて、とりあえずただもうひたすらびっくりしたのだった。地元の新聞に小さく載った“倒産”の文字をみてもそうだった。失業やリストラなんて、別世界の出来事だと思っていた。まさか、うちの父がそんなことに巻き込まれるなんて考えてみたことがなかったのだ。

 不幸は続くもので、父の会社が倒産した翌日、今度は弟の具合が悪くなってしまった。失業したのでもちろん社会保険にも入っていなくて、母が慌てて役場で国民保健の資格をもらって診察してもらったところ、まさかのインフルエンザだった。いろんな出来事がドッと押し寄せてきて疲れ果てた母は、その翌日にぎっくり腰になる。アーメン。

 そんな状況だったから「りっちゃん、クリスマス帰ってきてよ」と頼まれて断れるはずもなく、かといって友達に「お父さんの会社が倒産してさぁ、ちょっと帰ってくるわ!」なんて軽快に言えるはずもなく、「なんか、地元で親しかった人が亡くなったみたいで…」と適当なウソを見繕って想定外の帰省をしたのだった。

 久しぶりに帰ってきた実家は、父が倒産、弟がインフルエンザ、母がぎっくり腰…という悲惨ぶりなわりに、「ちょっと今の状況さぁ、笑えるよね」みたいな空気になっていて、深刻さに欠けていた。事あるごとに父に失業イジりをしたし、父は父であっけらかんとしているし、具合が悪い弟や母も食欲はあって、なんだか例年通りのクリスマスを迎えているような感じだった。よくある「苦難をともに乗り越えた家族」的ドキュメンタリーを想像していたわたしは、その地味さに少しがっかりしたのだけど、まあ小林家らしいよなと思いなおしたのだった。

 幸いなことに父は倒産した会社でお世話になっていた人に拾ってもらい、そのことについて弟が「一生懸命に働けば見ていてくれる人がいる」風の感動スパイスを加えた作文を書いて学校で評価され、奨学金をもらうこともできた。もちろんそのときは数年後に、今度は姉が無職になるなんて想像していなかっただろうけれど。

 生きている限り、いつどこで何が起こるかわからなくて、でもついそれを忘れてしまう。だから突然の落とし穴や目の前に現れた大きな壁に愕然として動揺したり、ヘコんだりもして。それでもまあ、人生はなんとかなるのだと思う。泣いても笑っても生きている限り、明日は来るし。18歳のクリスマスも、そんなに悪くなかったし。

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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