小林リズムの紙のむだづかい(連載94)

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紙のむだづかい(連載94)
小林リズム

【さすがー!で、すごーい!で、そうなんですかー!っていう話】

 
「聞き上手」が仕事になっているらしい。なんでもお金を払えば電話で話を聞いてくれるのだという。人間関係の愚痴だとか、趣味だとか笑い話、なんでも聞いてくれるということだとあって需要もあるそうだ。テレビを流し見しながらすごい時代だなぁなんて思って見ていたのだけど、面白いのはその“聞き上手の極意”にあった。

・否定や批判をしない
・正論を言わない
・悪口を裁かない
・「みんなもそうなんだから」は禁句
・解決策を提示しない

 …なんと!確かに会話ではなくてひたすら“聞き上手”…!しかもこれって女子が飲み会のときにするリアクションとして最適と言われている「さしすせそ」と通じるものがあるのだ。

さ=「さすがですねー!」
し=「知らなかったー!」
す=「すごいですね!」
せ=「先輩だから…」
そ=「そうなんですね!」

 「この間先輩の友達に芸能人の○○がいて…」「すごいですね!」「そういえば新しくできた話題のお店があるんだけど…」「知らなかったー!」どうでしょう、この万能さ。とりあえずこの5ワードさえ言っておけば会話がなくて気まずくなるということはないのだった。
 こうやって並べてみると人って共感を求めているんだなぁと思う。聞き上手の仕事にしたって否定や批判をしちゃいけないし、正論も求められていない。「みんなもそうだから頑張れ!」と叱咤激励するのも「こうすればいいんじゃない」と提案するのもよろしくない。なぜってそれは話を聞いてもらいたい人にとっては心地よくないものだから。

 聞き上手の仕事があるみたいなんだけど、やってみようかなぁ!と友達に意気込んで話してみたら「それってふつうに人と会話しているときも使うようになっちゃったりしない?飲み会の席とかで“お金もらえないの割りに合わない!”とか思いそう」言われたのでやめた。確かに、話を聞いてお金がもらえるんだっていう価値観になってしまたら、ふつうに人の話を聞いてあげることができなくなってしまいそう…。

「ぶっちゃけ、“さすがですねー”“知らなかったー”って言っておけばいいっていうスタンスが相手のことバカにしてるよね」
と。その通りすぎて何も言えないではないですか。
 共感されるのは気持ちいい。共感されると仲良くなれそうな気がする。誰かにわかってほしいし、わかってもらえると嬉しい。けれど、人が安易に相手に同調したり頷いたりしないのは、相手と向き合っている証拠かもしれない。たまにイラッとするようなアドバイスもぞっとするような本心もそう思ったら、しかと受け止められるように…
「ねぇ、これからどうするの?正社員で働かないの?年金とか奨学金だってあるんだから、家賃とか生活費もちゃんと払っていけるの…etc」
 …受け止められるようになるかしら。そして見渡す限り「さしすせそ女子」がモテている現実ふがいない…。

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