星エリナのほろよいハイボール(連載5)

星エリナのほろよいハイボール(連載5)


寿司を食べたくなる
                                           

星エリナ


 ドイツから日本へのフライト時間は11時間だった。フランクフルトを出発する予定は13時過ぎだったが、天候が悪く飛行機の中で2時間以上待った。結局離陸したのは現地時間15時30分。長いフライトが始まった。
 何度かヨーロッパへ行ったことはあるけれど、やはり長時間のフライトは苦手だ。運動していないのに機内食が出るし、同じ体勢で寝ていると身体中痛いし。私はとにかくおしりが痛くなる。最近は機内食がとても苦手になってしまった。まずおなかが空かない。牛丼かパスタか。温かくて美味しいのだが、やはり機内というだけで食欲が出ない。私は基本的にパンばかり食べていた。

 海外によく行く添乗員などの仕事をしている人は、日本に帰るとまず寿司を食べたくなるらしい。海外にも寿司屋はあるが、日本でなくてはならない。それはなぜかというと、ヨーロッパなどで寿司屋を営業しているのは中国人だからだ。彼らが外国で日本食や寿司のレストランをひらく理由は簡単だ。中華料理は安くてうまい、が基本で、日本食は少し高いがうまい、が基本だからだ。
 ドイツにもTOKYO SUSHIと書かれた店があった。中ではブロンドの美女がビールを飲みながら手巻き寿司を食べていた。しかしそこの厨房にいるのは日本人ではなく中国人。東京ではなく北京だ。うまくいえないが、どこか違う感がそこにはあった。

 日本に着くとすぐにおなかがすいた。到着したのは日本の朝9時。家の近くの駅につくとコンビニへ向かった。コンビニって本当にコンビニエンスだと思った。買ったのは135円のます寿司。ちょうど換金したときのレートは1ユーロ135円。1ユーロのます寿司は懐かしすぎる味だった。
 その後地元の友だちが駅まで迎えにきてくれて、寿司を食べに行った。コンビニでます寿司を買って食べたことは黙っていたままで、私はまたサーモンの握りを食べた。お米が美味しいことに感動して、日本に帰ってきたんだと実感する。
 次の日は日曜日で、私は一日中寝ていた。起きたら夕方で食事が用意されている。こんなぐーたらな生活ができるのも、私にとっては日本だけ。寿司が食べたくなったらいくらでも食べよう。