随想 空即空(連載122)内村鑑三の不敬事件を巡って

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随想 空即空(連載122)内村鑑三の不敬事件を巡って

清水正 

 勅語の礼拝はいかなる法律、いかなる教育令にも定められていなかった。にもかかわらず鑑三の躊躇は不敬と見なされ、国賊として罵られ、辞任を余儀なくされた。つまり、〈空気〉は法律や教育令などものともしない力を持っている。キリスト教には聖書という経典があり、信者にとってそれは絶対的な強制力を持っている。しかし〈空気〉に基づく日本教には文字で記された経典はない。憲法によって信教の自由が保障されていても、〈空気〉はそれ以上の力を発揮してしまうのである。

    鑑三の〈不敬〉は最初のうちは一部の教師や学生たちの激しい非難や抗議によって問題視されたが、この〈不敬〉を〈事件〉にまで増長させたのは新聞や雑誌の記事と言えよう。つまりジャーナリズムが事を大袈裟に発展させたのである。これは今日においても全く同じである。ジャーナリズムにも様々な観点があってしかるべきだが、たいていの場合、時の大きな潮流に乗って体勢を築き上げていく。一度この体勢がつくられてしまうと、そこから抜け出すことは困難を極める。

 鑑三の勅語を前にした礼拝躊躇が〈不敬事件〉を招き寄せた一番の原因ではあるが、しかしここには天皇を中心とする国家主義体制が醸し出す時代の〈空気〉が支配的になりつつあったことを端的に示している。鑑三はキリスト教徒でありながら、この〈空気〉を読めなかった。鑑三は〈JAPAN〉と〈JESUS〉の二つの〈J〉が両立すると考えていた。わたしは鑑三のこの二つのJの共存をかなり甘い認識と考えている。

 憲法で信教の自由さえ保証されている平時の日本で勅語礼拝を躊躇しただけで国賊扱いされるのであれば、有事にあっては死刑さえ覚悟しなければならないと考えるのがふつうであろう。キリスト教徒が同じ絶対神を信奉する異教徒(ユダヤ教徒イスラム教徒)たちとどんなに残酷無慈悲な戦争を繰り返してきたか、その歴史を少しでも繙けば、〈二つのJ〉の共存など歴史を知らぬ暢気な理想家の戯言にさえ思える。

 内村鑑三は垂直的に思考を深めることが苦手なキリスト教徒で、どんなに追いつめられても、自分の正義を信じて疑わない。鑑三の文章からキリスト教の教義やイエス・キリストに対する戦慄的な不信や懐疑をみることはできない。謂わば鑑三の内には一人のイワン・カラマーゾフが潜んでいない。鑑三に神に対する不信や懐疑がまったくなかったなどとは言わない。最初の結婚が破綻したとき、〈不敬事件〉に巻き込まれた妻を病気で失ったとき、確かに鑑三の内で文字化できない神に対する不信と懐疑がわき起こったであろう。しかし鑑三のそれは、少なくともわたしのそれとは違う。良心に背き、強制によって「イエスを信ずる者たちの契約」に署名した鑑三は、その後、キリスト教から離脱するほどの懐疑と不信に襲われることはなかった。鑑三のキリスト教は文学や芝居や落語を内包できない、無粋で一義的で、偏頗な次元にとどまっている。

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