星エリナのほろよいハイボール(連載65)

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星エリナのほろよいハイボール(連載65)

ケーキを作る
星エリナ
 
「ここら辺に、ケーキ屋さんある?」
 福島から避難してきた親戚たち。小学生二人のお母さんにそう聞かれたのは、確か避難してきて一週間くらい経ったときのことだった。剣道大好きお兄ちゃんの誕生日が、三月だったのだ。避難先での誕生日。少しでも、楽しませてあげたい。
「じゃあ、つくりましょう!」
 私の家ではクリスマスにも誕生日でも、ホールケーキをつくっていた。そんなに凝ったものではないけれど、一般的なショートケーキをつくる。急遽翌日、誕生日パーティーをすることにした。避難している親戚も全員呼んで。
 その日のうちに、近所のスーパーへ行き、生クリームやいちご、パーティー用のお肉などを買った。
 そして翌日、ケーキを一緒につくろう、と言っておいたら、朝から二人は家にきた。ケーキ、ケーキ、とはしゃぐ二人に叩き起こされて、私は朝からケーキを手作りすることとなった。お菓子作りは結構好き。バレンタインもいっつも手作り。パウンドケーキとかクッキーとか、生チョコとか。まぁほとんど自分で食べます。
 と、いうかんじでもちろんスポンジから手作り。小学生の二人には卵を割ってもらったり、材料を計ってもらったりした。お手伝いを喜んでしてくれる二人が可愛くて、将来絶対に子どもを産んで、一緒に料理する、と私は誓った。二人が一番楽しんでいたのはいちごのトッピングだった。へたを取ったいちどを二人が並べていく。あらかじめ平らに私が塗っておいた生クリームの上に、そーっと並べる。こてん、といちごが倒れると、真剣な顔してもう一度立たせていた。
 夕方からは私と母の番。ローストビーフとかミートソースパスタとかオードブルとか、とにかくパーティー料理をつくる。ミートソースは母のお手製。オードブルは私のお手製。
 大人数で囲む食卓は楽しすぎて、私も嬉しかった。本日の主役、剣道大好きお兄ちゃんも嬉しそうにしていた。はりきってごはんをつくりすぎてしまったせいで、かなりお腹一杯。デザートのケーキは朝から用意していたのだけど、あまり食べれず。翌朝食べるはめになったりした。だけどそれも、楽しかった。
 二人はお母さんの携帯電話を使って、メールをたくさんしてくるようになった。
「また一緒にケーキつくろうね」
 後日送られてきたメールには、かわいい絵文字たっぷりで、こう書いてあった。
 うん、またつくろうね。あのパーティーのときの笑顔が見れるなら、私は何度だって二人にケーキを焼いてあげる。だからまた、いちごを並べよう。いちごが倒れても、何度でも立たせよう。
   

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