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星エリナのほろよいハイボール(連載100)
忙しいを言い訳にし始める
星エリナ
渋谷で運命的に出会ったバンドのワンマンライブ後、応援したいという気持ちはあったけれど、少しずつ私は彼らから離れていった。いつまでも依存するように居場所を求めていてはだめだと思ったのと、そんな自分が気持ち悪いと感じたからだ。それでもまだ彼らに話を聞いてもらいたい、私を認めてくれる彼らに会いたい、という気持ちは消えなかった。だからたまに大宮駅や池袋駅まで路上ライブを見に行っていた。
久しぶりに会っても、彼らは優しく接してくれる。それが営業である。ホストクラブにハマる女性の気持ちが少しわかった。
「最近あんまり来てくれないね」
寂しそうに言うボーカルの方だけど、それは寂しいから言っているわけではないのだろう。ある程度ファンを握っていたい。路上ライブも客が1人や2人だと、はじめて見る人は立ち止まりにくいのだ。複数人客がいれば、立ち止まって聞きやすい。私たちはファンだから本物だけど、『さくら』のような存在なのだ。
「最近、大学が忙しくって」
この頃から、私は忙しいを言い訳にし始めた。ちょうど大学二年生になったばかりのころだったと思う。後輩ができて、先輩としてやらなくてはいけないことが増えた。正直、後輩が苦手だった。子どもは好きなんだけれど、年が近い後輩が苦手。「年上がお好き(連載11)」にも書いたが、ずっと先輩や年上の方と付き合ってきたため、どう接していいかわからなかったのもある。また、家族内でもトラブルが起き、サークルでもいろいろあり、大学生活が疲れたようにも感じていた。
大学が忙しいというと、バンドのメンバーはいつも大変そうだね、と話を聞いてくれた。ギタリストを除く3人は大学へ行っていないからだ。専門学校で音楽を学び、それぞれ活動してきている。大学に通う私と彼ら、どちらが大変な道かはわからない。彼らのほうが大変なこともあるだろう。それでも、互いにその道を選んできたのは自分だから、互いに話を聞きあった。そういうときはすごく楽しいのに、女子高生に囲まれている彼らを一人で眺めるのは本当に辛かった。そういう時こそ考えてしまう。このまま彼らに依存した私でいいのだろうか。
だから、少しずつ離れるために、会うたび「忙しい」と笑うのだった。運命的な出会いからもうすぐ二年。漫画「NANA」的なわくわくはもう消えつつあった。いつかもっと仲良くなって、夏はみんなで花火をして、冬はみんなで鍋を食べる。そしていつかメンバーと恋愛、なんて絶対にありえなくて。
1人で帰る電車のなかで、いつも出張彼氏のホームページを眺めて、なんだかつまらなく感じるのだった。
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