星エリナのほろよいハイボール(連載27)

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ドラえもん』の凄さがわかります。
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星エリナのほろよいハイボール(連載27)


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 私の父は、福島県で生まれた。星という苗字がつく人は、福島が多い。アルバイト中にも、「珍しい名前だね。私もだよ」と話しかけてくれたお客様はみんな福島だった。祖父母をはじめ、親戚はみんな福島にいる。小高町に祖父母は住んでいた。小屋のような木の温かみある駅に、幼いころは電車で行った。祖母が迎えにきてくれて、車で三十分くらいしたところにある家へと行く。34号線に面した家は裏には山があり、家の脇には小川が流れている。自然に溢れたこの家が本当に私は大好きだった。
 広い二階は南側一面が窓だった。美しい山を見ながら畳に寝転がってアイスを食べるのが夏休みの習慣。窓を開けておくと気持ちいい風が入ってくるから、エアコンなんていらなかった。ただ、たまにオニヤンマとかギンヤンマとか、大きいトンボが入ってくるのがすごく怖かった。しかもそれを祖母はざるで捕まえて、兄や私に見せてくるのだから本当にとにかく怖かった。
 7月の終わりごろに小高へ行くと、夜に楽しみがひとつ増える。34号線から車も入れないような細い小道へ入る。少し歩くと、山と田んぼに挟まれる。足元にはちょろちょろと水が流れている。この季節になると、ほたるが見れるのだ。今でも忘れることができない。野生のほたる。小川が流れているちょろちょろという音と風で木が優しく揺れるさわさわという音だけ。人工的な音がない世界。大好きだった。だが、あの震災から、小高には入ることすらできなくなってしまった。
 さて、google地図のストリートビューをご存知でしょうか。カメラを搭載したストリートビュー撮影車がいまや世界中を走っている。それがなんと、福島第一原発付近の非難区域まで撮影に成功した。google地図からなら、2013年の福島がどこにいても見れる。私はあれから、何度も何度も祖父母の家を見た。いつもみんなで歩いた34号線の両脇が草ぼうぼうで、あの日ほたるを見た小道も草だらけ。田んぼはなくなっていた。
 それだけではなく、昔はなかったたて看板が増えている。ブルドーザーに「決死救命」と書かれている。「殺処分、餓死はやめよう」「牛注意」なんて、見たことないのに。電信柱にまで「決死救命」と書かれている。とても怖くなった。私の知る小高がなくなってしまったかんじ。
 私が知ってる大好きな小高を残した作品、「ほたる」を金のたまご文学賞に自薦しました。出来はあんまりよくないけれど、どの作品より、本当は思いが詰まってる。
 よかったらみなさん、ほたるの応援お願いします。ツイッターで呟いてください。拍手してください。フェイスブックでいいねしてください。
 いや、応援しなくてもいいんで、読んでください。今度はこのお話を書いた裏話、しましょうか。


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