文芸学科卒の林真理子氏が日大の新理事長就任の記者会見

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近況報告

六月二十四日、二年ぶりに芸術学部に出講する。大学院の学生、教え子で准教授や講師になっている十人ほどを相手に二時間ばかり「プーチンと『罪と罰』」をテーマにいろいろと話した。久しぶりの面談授業で神経痛の痛みも忘れて熱い時間を過ごすことになった。六時過ぎには金曜会の場所であった中華料理店「同心房」に集まり、八時半まで雑談。マスター、ママにも歓待され、しみじみ故郷江古田を体感する。参加者でただひとり、文芸学科七年生の船木君は押入れ生活で一万枚を越える卒論を書きあげてあるそうで将来が楽しみである。わたしが卒業した時には、わたしの千枚の卒論が最高枚数であったが、船木君の登場で文芸学科の卒業論文は万単位になる。漫画のように画期的なことで、わたしは文芸学科の飛躍を頼もしく思っている。

今日、七月1日は文芸学科卒の林真理子氏が日大の新理事長就任の記者会見があり、すべてを見た。トップは明確なヴィジョン、決断力、実行力が必要とされる。記者会見を見るかぎり、林理事長には大いに期待できる。理事会のメンバーに女性が九人就任したそうで、まちがいなく革新の風が吹きそうだ。林理事長は「新日大」の構築を願って「N・N」を標語に掲げた。日大の教職員、OB・OG、日大生がこの標語のもとに各自の能力を存分に発揮すれば、まさに創造的な新日大ができあがるだろう。林理事長はわたしの五年後輩にあたる、文芸学科の主任教授の山下聖美氏は大学院での教え子、江古田文学編集長の上田薫氏は学部の教え子である。林理事長の出身学科である文芸学科は学生を含め、総力をあげて協力態勢をとることができよう。江古田文学は「林真理子特集」を組むことができるし、林芙美子研究の山下主任教授は女性同士として腹をわった話もできるだろう。ようやく日大も新たな世界に向かって乗り出す時期を迎えたと思える。林理事長によって、従来のスポーツばかりでなく文化・芸術のさらなる発展にも力がそそがれることになろう。日大芸術学部の実質的な創設者松原貫先生の創造的な芸術、宗教、哲学が新日大に普及していくことを願わずにはおれない。

 組織はどこに落とし穴が掘られているかなかなか見分けがつかない。最も身近にいて味方であるはずのものが敵である場合がある。会見の最後、「新しい日本大学」の標語「N・N」を林理事長一人が胸に掲げたことが少し気になった。わたしの懸念を吹き飛ばすような、改革路線を着実に歩み通してもらいたい。一人の日大OBとして微力ながらも応援していきたいと思っている。

【LIVE】日本大学新理事長 林真理子氏 記者会見(2022年7月1日)

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発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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プーチンと『罪と罰』(連載23) 清水正

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プーチンと『罪と罰』(連載23)

清水正

 

  「コンバット」は戦争映画であるが同時に人間ドラマでもある。戦場という究極の場に置かれた人間の誤魔化しようのない裸像が描き出される。しかし、このテレビ映画は様々な制約のもとで製作されている。戦争の現場における目に余る残虐非道の場面は慎重に回避されている。例えば死に至る苦悶の姿や、婦女暴行などの場面はない。敵であるドイツ兵は人間の姿をしたロボットであり動く人形のように描かれ、その銃弾、砲弾で倒れる姿に同情は起きないようになっている。ドイツ兵がアメリカ兵のように扱われることはあっても、視聴者の感情移入は生起しないような描きかたに押さえられている。

 「コンバット」で戦争の悲惨やその不条理性を露骨に暴けば、テレビ放映自体が許されなかったであろう。莫大な制作費をかけてお茶の間で放映されるテレビ映画が、妥協なき人間探求、戦争の非人道性を追求告発することはできない。軍曹として容赦なく敵兵を殺す使命を帯びたサンダース軍曹の生き方そのものを否定することは許されない。多くの自国民の犠牲を払って正義の戦争を遂行しつつあるサンダースを否定することは、アメリカという〈民主主義国家〉の否定につながるのだ。

 ロシア・ウクライナ戦争を報道番組でしか知り得ない今のわたしにとって、「コンバット」はフィクションでありながら戦争の持つ不条理性をリアルに伝えてくれる。わたしは「コンバット」アメリカ人やドイツ人よりはより公平な立場で観ることができる。アメリカの兵士もドイツの兵士も、個人の意志を越えて戦場に駆り出された同じ人間とみることができる。彼らは彼らなりの精神世界を生きていたはずであり、殺し殺される戦場の当事者として戦争に関する断固とした思いを抱いていたはずである。が、「コンバット」において兵士の内面に必要以上に踏み込むことは厳しく制限されている。

 もし、「コンバット」の戦場に、非戦論を唱える〈トルストイ〉や、汝の敵を愛せよと唱える〈キリスト〉が現れたらどうなるのだろうか。「コンバット」には暴力に対する無抵抗主義のトルストイや愛と赦しのキリスト、ましてや不信と懐疑の王とも言えるドストエフスキーが登場する場所が完璧に用意されていない。

 ロシア軍とウクライナ軍の戦闘状況を「コンバット」並にリアルに伝える報道番組はないが、戦闘後の破壊され尽くした町や村の模様を見ることはできる。ウクライナの美しい自然や建造物はロシア軍の砲撃によって廃墟と化してしまった。ウクライナの国民の多くが理不尽な侵略攻撃によって故郷を離れ他国へと亡命せざるを得なくなった。幼い子供を抱えて長い道のりを歩き、バスや電車を乗り継いでようやく亡命国(主にポーランド)についても、先の見通しが確かなはずはなく、亡命者は一様に行き場のない悲しみと怒りを押さえ込んで不安げな様子である。

 今後、戦争が続く限り、犠牲者の数は増し、悲劇は幕を下ろすことができない。夫を失った妻、父を失った子、息子を失った母たちの苦しみと嘆きは深まるばかりである。戦争の残酷、悲惨は、両目を大きく開けて凝視しなければならないだろう。はたして、戦争を性懲りなく繰り返してきた人類は、そこから決定的な何かを学ぶことができるのだろうか。



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プーチンと『罪と罰』(連載22) 清水正

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プーチンと『罪と罰』(連載22)

清水正

 

 ロシア・ウクライナ戦争の報道番組と同時に半世紀以上ぶりに「コンバット」を見続けている。報道番組では放映されない戦場の現場を「コンバット」は生々しく伝える。第二次世界大戦から八十年近くたった今、兵器は進化したとはいえ、戦車、大砲、機関銃による激烈な戦場場面は、現在のロシア・ウクライナ戦争を彷彿とさせる。現代人は使えば人類破滅につながる核兵器を開発したが、前線の現実は今も昔もなんら変わらない。「コンバット」は戦場における人間のあり方をつくづく考えさせられる。

    全百五十二話のうち三分の一ほどを観たが、特に軍曹サンダースの生き方が感銘深い。サンダースの部隊長としての基本は、上官の命令を絶対としてそれに従うこと、命令に不服な者、命令に反する部下の身勝手な言動は決して許さない、前線において最も危険なことは部下にまかせず自らが率先して行動する、などである。

 サンダースは寡黙な男で戦場において無駄口はいっさい叩かないし、部下にもそれを要求する。どんな困難にも、不条理に対しても怯むことなく、果敢に突撃していく。部下の命を自分の命よりも大切にし、部下がどんな不満や反抗心を抱いていても、そのこと自体を一方的に攻めたりしない。終幕場面では、戦場での問題児(妙にプライドの高い、あるいは臆病な自己中心的な新米兵士)と例外なく和解する。

 アンダーソンは行動で模範を示す典型的な分隊長であり、どんな事態に対しても理屈を挟むことはない。戦場の不条理は不条理のままに描きだされ、その不条理に立ち止まって思考を深めるようなことはない。サンダースは読書家でも思索家でもなく、与えられた使命を全うすることだけに戦場を生きている。視聴者はサンダースや部下約六名ほどの名前、顔、性格、および彼らの人間的触れ合いなどを観ることはできるが、ひとりひとりの登場人物の内面深くに踏み込むことはない。

 「コンバット」は戦争の不条理は描くが、その不条理を告発しはしない。「コンバット」において〈戦争〉は、不可避的な現実として、逃れることのできない所与としてある。戦場における人殺しを批判し、逃亡をはかる兵士はこの映画においては卑怯者の烙印を押されるのだ。戦争の善悪を問うてはいけない、戦場に送られた兵士は命令に従って自分に与えられた使命をまっとうせよ、命令する者が上官であれ、国家であれ、神であれ、それは不問に付しておかなければならないのである。

 「コンバット」に登場する兵士も、この映画を観る者もまた、無意識のうちにサンダースの揺るぎなき使命感に共感し、終幕場面においては彼らの〈微笑〉を受け入れているのである。サンダースの生き方、その与えられた使命に生きる男の生き方を、断固として拒否できる生き方を提示できなければ、人類は依然として「コンバット」の世界を生き続けるほかはないということになる。



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プーチンと『罪と罰』(連載21)

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 ドストエフスキーの文学をいくら読んでも救いはない。ドストエフスキーの文学は救済の文学ではなく、「人間とは何か」を徹底して追及した文学である。『罪と罰』を読んでキリスト者になったひとをわたしは知らない。わたしはトルストイの宗教論文を読んで、彼をキリスト者と思ったことはない。トルストイは地主であることを放棄し、農奴を解放し、著作の印税すべてを投げ出したのか。キリスト者が八十二歳まで生きられるということそのこと自体が信じられない。

 わたしはトルストイドストエフスキーも各々の仕方で人間を描いた偉大な小説家とは思うが、キリストの教えに忠実なキリスト者であったとは思わない。小説を書き続けるためには絶対的なものに対する不信と懐疑を必要とする。これが創作の必要不可欠のエネルギーであり、これが枯渇すれば創作の現場に立つことはできない。

 ドストエフスキーキリスト者の道を断固として歩もうとしたなら、『罪と罰』の主人公に与えた「思弁の代わりに生活が到来した」に倣って「創作の代わりに生活が到来した」と言ってペンを折ったらよかったであろう。しかし、周知の通り、ドストエフスキーは『カラマーゾフの兄弟』に至るまで人間を描くペンを折ることはなかった。ドストエフスキーにとって創作行為そのものが〈生活〉(жизь=命)であり、別にそれ以外の生活が用意されていたわけではない。

 ロジオンの思弁は彼のうちで死に絶えることはなかったし、それはロジオンばかりでなく、自分の頭で物事を考える者すべてのうちで生きている。ロジオンの悪夢の中では〈理性と意志〉は人類を滅亡に導く、とんでもなく悪の〈旋毛虫〉のように扱われているが、たとえそうであったにしろ、〈理性と意志〉を捨て去った後の人間の生きてある姿を想像することはできない。偉大な創作家ドストエフスキーでさえ、〈選ばれたる純な人々〉の生活を具体的に描くことはできなかったのである。

 ロジオンの〈悪夢〉を読んで、つまらぬ少女趣味的幻想を抱くのではなく、一度は徹底して絶望したらいいのである。絶望を恐れず、引き受けてから、もう一度〈理性と意志〉の〈旋毛虫〉を、〈精霊〉を考えたらいいのだ。ドストエフスキーを絶対化する前に、ドストエフスキーが抱え込んだ絶望ぐらいはしっかりと見ておかなくてはならないだろう。

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プーチンと『罪と罰』(連載20)

清水正

 

 イワンは「神がなければすべては許される」と言ったが、「神があるからすべては許される」と言っても同じことである。神が不条理な世界を創造したのだから、人間が神にならってどんな不条理なことをしでかしても咎められる筋合いはないということである。

 わたしは必然者であるから、全世界の事象すべてを必然として肯定する。こういった必然者にとって善悪観念を超脱した自然の摂理は素直に許容できる。創世記の蛇が口にした、神が禁じた木の実を食すると善と悪とを知ることになる、ということをそもそもわたしは受け入れない。

 ドストエフスキーは『悪霊』のニコライ・スタヴローギンにおいて善悪観念を磨耗してしまった人間像を描いている。つまり知識を徹底すれば〈善〉も〈悪〉も様々な解釈によってたちまち相対化されてしまうので、それを〈絶対〉とすることができないのである。スタヴローギンがかつて抱いていたという国民心信仰(神そのものについての判断は保留状態にあるが、とりあえずロシアの神は信じる)はシャートフに、神がもし存在しないのであれば自らが神になるという人神思想はキリーロフに、そして革命思想はピョートル・ヴェルホヴェーンスキーに継承させ、彼自身はもはやどの思想をも信じ得ない虚無のただ中にあって、しかもその虚無さえ信じていないという。

 つまりスタヴローギンの例をとっただけでも、神の禁じた木の実は、人間に善悪観念を植え付けるどころか、その徹底的破壊をもたらすということになる。善悪観念を磨耗したスタヴローギンは十二歳の少女マトリョーシカを誘惑し破滅に追い込んだりする。なぜこんなばかげた実験をしたかと言えば、スタヴローギンは沈黙し続ける神を試みているのである。

 要するに、スタヴローギンもイワンも、その前身を探ればロジオン・ラスコーリニコフも、そして『地下生活者の手記』の男も、どんな卑劣な行為の最中にあっても、神を意識せずにはおれないのである。その意味ではドストエフスキーの創造した人神論者は例外なく逆説的な意味において〈キリスト者〉なのである。地上生活者に毒舌の赤い舌を出しながら地下室に閉じこもった淫蕩卑劣な地下男も、二人の女の頭上に斧を振り下ろしたにも拘わらず自らの〈踏み越え〉(犯罪)についに〈罪〉意識を覚えなかったロジオンも、すべて神を意識し、神に反逆し、そのことで神に結びついていたいと願っていた存在なのである。

 人間を試み、裁き、罰する神は、被造物である人間によって試み、裁き、罰せられるのである。ドストエフスキーの人物たちに何かしら拭いがたい不潔さを感じるのは、人神論者たちが神と決別できていないところにある。人神論者に限らず、ドストエフスキーが真実美しい人間、十九世紀ロシアに降臨したキリストを体現させようとしたムイシュキン公爵にも〈汚らわしさ〉を感じる。この男の底知れぬ内部世界には、彼自身にも知られることのない邪悪の固まりが潜んでいる

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プーチンと『罪と罰』(連載19)

清水正

 

 わたしは一神教に対する根深い懐疑があり、ドストエフスキーのキリスト観に関しても十二分に検証する必要があると思っている。ロジオンの〈悪夢〉において明白なように、人間に〈理性と意志〉を賦与したものは人間存在を超えた存在、すなわち神であり、それによって人類を滅びに至らせたものも神であり、人類破滅後の新世界創造のために何人かの純なる人を選んでいたのも神である。

 すべての事象をプログラミングしているのが神であるなら、すべての責任は神が負うべきであって、神のシナリオ通りに生き死んでいく人間に審判を下すことは理不尽ということになる。〈人殺し〉も〈淫売婦〉も〈警察官〉も〈裁判官〉も〈弁護士〉も〈独裁者〉……もすべては神が設定した不可避の存在であり、彼らは変更不能なシナリオ通りに生き死んでいったまでのことである。

 〈悪人〉を自ら設定しておいて、その〈悪人〉を最後の審判で裁く神など小学生の頭脳を持ってしても理解することはできない。シナリオ通りに舞台で〈人殺し〉をした役者を公演後に地獄に突き落とす舞台監督はいない。最後の審判、原罪、処女マリアのキリスト懐妊、三位一体などキリスト教を成立させている根本教義を何一つ理解できない。

 わたしの理性と知力は一神教の〈神〉は人間が想像・創造したものとしか思えない。わたしが問題にしたいのは、一神教の〈神〉をも超えた存在である。人間に意識・意志を賦与した存在、善悪観念を超脱した存在、意志の意志としての存在である。

 イワン・カラマーゾフは神の存在は認めても神の造った不条理に満ちたこの地上世界を認めることはできないと言った。イワンの求める神は、地上世界において公平・正義・真理を体現する神である。しかし注意しなければならないのは、イワンの求める〈公平・正義・真理〉は人間世界にのみ通用するものであって、そもそもこの世に生存するすべての生物を視野に入れていない。

 キリスト教の愛と赦しは人間に適用されるものであって、人間が食料として屠殺する牛、馬、羊、豚、鳥などの命をそもそも問題にしていない。ドストエフスキーといえども、こういった点に関しては深く言及することはなかった。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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表紙

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