随想 空即空(連載120)内村鑑三の不敬事件を巡って

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随想 空即空(連載120)内村鑑三の不敬事件を巡って

清水正 

 〈不敬事件〉が起きたその日、二人のキリスト教徒である木村駿吉(教授)と中島力造(嘱託教員)が欠勤している。なぜ彼ら二人は欠勤したのか、小沢三郎の『内村鑑三と不敬事件』を読んでも詳しい事情は分からない。何か、不穏な空気を予め感じて慎重に身を処したのかもしれないし、欠勤は二人で相談した結果であったかもしれない。もしそうだとすれば、鑑三は彼ら二人とも親密な関係にあったとは思えない。鑑三の非妥協的、一途な性格は日本的な忖度や柔軟性を欠いており、同じキリスト教徒であっても腹を割った親密な関係は持てなかったのであろう。まさに鑑三は山本七平の言う〈空気〉を読めない無粋な男であり、植村正久の言う〈痴愚な当局者〉が作り出す児戯に類する習俗の罠にかかりやすいキリスト教徒だったのである。おしなべて鑑三は事にあたって柔軟な姿勢で対応することができない。あいまいに頭を下げたことをとがめられ、再度敬礼することを求められた時、瞬時に周りの〈空気〉を読んで、誰にでも分かるように頭を下げられるような鑑三であったなら〈不敬事件〉などでっち上げられることもなかったであろう。

 鑑三が〈不敬事件〉によって同僚の教師や学生、世間から弾劾され職を辞さなければならなかったということは、すでに日本国内に天皇を絶対的統治者とする国家体制が構築されていたことを意味している。弾劾者は当時支配的になりつつあった天皇を中心とした国家主義的な〈空気〉を敏感に察し、それに乗じていた側面もあろう。国粋主義国家主義的な空気が支配的になれば、一個人の意見や思想などなんなく呑み込んでしまうのである。鑑三の〈不敬事件〉は未だその予兆としての典型的な津波被害であったとも言えるが、時代が国粋主義に反する個人の自由と信仰を束縛する方向に向かっていたことは確かであろう。

    教育現場における学校の当局者がこういった空気に極度に敏感で、植村正久の言う〈妄想〉にとりつかれる傾向にあることはいつの時代も同じである。彼らに独創的な教育理念や思想があるわけではない。彼らの行動原理はたいていの場合、理念や思想ではなく自己保身であり、国家が定めた方針に従うことを旨とするのである。おそらく鑑三のあいまいな態度を許容する同僚教員や学生もいたであろうが、彼らは声をあげない、少なくとも後世に伝わるような明確な声をあげていない。結果として彼らも時代の空気に順応していたことになる。〈空気〉は大声を張り上げて非難、攻撃する者だけがつくりあげていくのではない。その背後にひたすら沈黙を守っている大多数の者たちが〈空気〉を支配的なものに醸成していくのである。

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