随想 空即空(連載152)兵役拒否を巡って

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随想 空即空(連載152)兵役拒否を巡って

清水正  

 

    鑑三はキリスト教に入信するまでは儒学神道、仏教の影響下にあったのだから、日本人独自の視点からキリスト教の根本教義に揺さぶりをかけられたはずなのに、残念ながらそういった視点はない。鑑三の議論は彼特有の確信(信仰上の)に基づいており、一見揺らぎのないように見える。が、わたしは鑑三の信仰上の確信の根拠に向けて懐疑の眼差しを注いでいるので、彼の確信にたぶらかされることはない。理性を徹底すれば、善と悪とを区別することができない地点へとたどり着く。これはドストエフスキーが『悪霊』のニコライ・スタヴローギンの形象において体現化した。

    「創世記」における全知全能の神は、自ら創造したアダムとエヴァエデンの園の中央に生える木の実(知恵の実)を食べると死ぬと宣告する。木に潜んでいた蛇(悪魔)はエヴァを誘惑し、禁断の実を食べさせることに成功する。ところで、どういうわけかこの知恵の実を食べると死ぬと神に宣告されていたが、エヴァとアダムは死ななかった。さらに、知恵の実を食べると、善と悪とを知ることになると言われていたが、なぜ善と悪を知ることが良くないのかについては書かれていない。ドストエフスキーがニコライ・スタヴローギンにおいて提示しているのは、知恵の実を食べたことで人間は善悪観念の摩滅の次元まで突き進んでしまうという事である。知恵の実の効果が善と悪とを認識させる、その次元にとどまっているのならむしろ歓迎すべきものであろう。もはやこの時点でニコライ・スタヴローギンは「創世記」の神の言に背いていると言えよう。

    ベルジャーエフドストエフスキーはそれまでのキリスト教の教義をさらに深めたとまで言っているが、まさにドストエフスキー文学に登場する人神論者たちは《神》そのものに向けて深遠な懐疑の刃を振り下ろしているのである。ドストエフスキーは小説家としてきめ細かく具体的に神と人間の問題について掘り下げているが、鑑三の場合は最初の結婚の破綻の時から、具体的な描写を回避している。鑑三がタケとの結婚破綻に関して宮部金吾、新渡戸稲造をはじめ友人知人宛に多くの手紙を書いているが、しかし肝心な事に関してはいっさい報告しない。タケの内心の思い、その複雑な感情に関しては読者が想像力の限りを尽くして思い描くほかはない。

    宗次郎の兵役拒否に教訓を垂れる鑑三の内心の複雑さは、彼自身の言葉によっても、さらに鑑三の言葉を絶対視している宗次郎の記録によっても明白にはならない。鑑三の言葉をドストエフスキー的小説の言葉に置き換えてみるのでなければ、生の人間の声は響いてこない。「汝、殺すなかれ」の言葉を胸に抱いて、戦場にて人を殺すということはどういうことなのか。鑑三の書き言葉は激情に震えているが、小説的具体的描写に欠けているので、激情が独りよがりの抽象的次元にとどまっている。こういった鑑三の文章に心酔できる読者もまた、現実を忘却して抽象の世界に微睡む者である。鑑三のキリスト教信仰を根底から揺さぶる〈人神論者〉は存在しなかったのだろうか。存在しないのであれば、鑑三の世界にアリョーシャとイワンの対決場面を見ることはできない。

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