随想 空即空(連載129)兵役拒否を巡って

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随想 空即空(連載129)兵役拒否を巡って

清水正 

 なぜ齋藤宗次郎は鑑三の言葉に従って当初の信念を翻したのか。もし宗次郎に不動の信念があれば、処刑を覚悟して兵役拒否を貫いたであろう。鑑三の忠言はキリストの言葉をも凌ぐ力を持っていたのであろうか。原理主義的な観点に立てば、宗次郎は鑑三の忠言を断固として拒否しただろうし、さらに鑑三にも自分と同じ行動をとることを進言したであろう。宗次郎になぜそれができなかったのか。宗次郎の内に迷いと躊躇があったからではないのか。このへんの内実を探るために、さらに『花巻非戦論事件における内村鑑三先生の教訓』の「三 事件に対する先生の教訓」から引くことにしよう。

 

  明くれば夜来の雪は全く晴れて、光り輝く快晴の土曜日、寝室に当てた二階の書斎に、先生は厳かに私を呼んで、じゆんじゆんと事件に就いて語られました。翌日の日曜の午後の集会と二回に亘って諭された教訓は次の通りでありました。(本記事内容は、凡て私の当時の日記より抜粋せるもの)

  今回君の兵役を拒み納税を拒むの件。真理と真理の応用を混同してはならない。まず君のこの決心実行の結果を考ふるに、第一に君自身の不運、第二に家族同志らの迷惑を来すは当然である。これのみならば左程重大な事ではないが、第三に聖書の曲解たるを免れない。ここに至つては非常な大問題である。聖書の真意を曲げ、福音の伝道を妨げ、人を躓かせるに至る由々しき事である。これを断行して友人と家族に迷惑をかけ、苦難を与えるは、実に愛の精神なき者である。甚だしき無慈悲の事である。それ故、君がどうしてもそれを実行したいのならば、この事は全く人に告げず、人に問わず、友にはからず、その関係の及ぶところを充分に察して、予め之が備えをなし、責任を自分一人で負うて行うべきである。昔ローマで行われた獣闘の罪悪は、当時のキリスト信者の一人一人の犠牲によつて廃止の幸福を見るようになつた。正に其の態度を以てすべきである。

  次に軍備撤廃、非戦論は平和を来す順序として唱えられる大事の事であるが、平和は反戦論者が思うような地的、肉的の平和を目的とするような浅薄なるものではない。人間の議論や運動で来るものではない。真正の平和はキリスト再び臨り給うによつてのみ望み得るものである。昔にも戦争があり、また更らに一層悪しき人身売買や売淫もあつた。然るにキリストもパウロも一度も之を云々した事はない。福音の真理を以てする事は最も捷径であり、根本的である。戦争は悪魔と悪魔の戦いであつて、之に抵抗すれば却つて益々増大するのみである。イエスは無抵抗を教え、その態度をとつて勝利を得給うた。今日に於てもその通りである。若し目に余る所の悪習を

   これ悪事なり

  とて一々即時に廃止することになれば、独り兵役納税に止らない。我らの前に無数に存在している。強いて無理矢理に除かんとして、除き得ないことはない。然れどその結果は一時的であり、外面的であることは免がれない。全く無益である。戦争でも人身売買でも、人間は衷心から神の前に罪を感じて進んで廃止する時を待つべきである。徒らに外側より過激な手段で強制せんとするは、決してキリストの精神、方法ではない。古来聖書を曲解して多くの弊風を生んだ事は歎くべき事である。我らは聖書を神聖に解し、霊的にきよめ、実行する方法を執るべきである。

  むろん我々は非戦主義は何日までも続けるが、一端開戦と決したら、各自能う範囲で言行し、十字架の福音を伝えて自分を始め一歩一歩平和の為につくし、キリストの再臨に備え、神の審判を待つべきである。

 との教訓を説かれたので、私は聖書に暗く、社会主義者反戦論の影響受け、傲慢に駆られて居ることを悟つて先生の教訓に全く心服したので、先生は安心され、ひどく喜ばれ、従つて午後の集会から帰京の途に就かるるまで、終始歓喜感謝で過されしを認めました。十五里の遠き岩手山下の六尺の雪の中から馳せ散じた岩上氏を控室から呼び、祈祷の後三人で朝食を共にされました。

  先生の午前の散歩に私が先導に当つたが、市街を経て北上河畔に達した時、先生は私を顧りみて

  今朝あのように語つたが、然し若し、良心の命令であるならば、やれ

 

 と言われ、この一言によつて先生が誰人の信仰意志をも圧迫せず、その自由を重んぜられる純真さを深く心に銘して帰えりました。(15~19)

 

 鑑三の〈教訓〉に宗次郎は納得したわけだが、いったい何を納得したのかわたしにはわからない。鑑三は〈真理と真理の応用〉を混同してはならないと説いているが、〈真理の応用〉とは何を意味しているのか。宗次郎が〈兵役を拒み納税を拒む〉のは理論上、あるいは宗教上においては〈真理〉であるが、それを実際に行動に移すこと、すなわち〈真理の応用〉とは別のことで、両者を混同してはならないと言っているのであろうか。

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