随想 空即空(連載82)内村鑑三の最初の結婚と破局を巡って#ドストエフスキー&清水正ブログ#

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随想 空即空(連載82)内村鑑三の最初の結婚と破局を巡って#ドストエフスキー清水正ブログ#

清水正

 砂川萬里は『内村鑑三新渡戸稲造』(一九六五年十二月 東海大学出版界)の中で新渡戸稲造がいかに〈同情深き人物〉であったかを示すエピソードを次のように記している。読んで、わたしは目頭が熱くなった。感動的な話なので省略せずに全文を引用する。

 

 かれが台湾民政部殖産局勤務時代、地方視察に行ったことがある。かれは台南の一旅宿にしばらく滞在した。その節かれの受けもちの三十歳ばかりの女中があった。真に忠実でていねいな女中でかれも感心していたが、ある日この女中の運んでくる食事の汁物が少しこぼれていた。かれは不快を感じたがこれをとがめることなく、さらに今一杯の汁物を所望したところ、例の女中がふたたび運んできた汁物はまたこぼれており(かれのそれとない観察では)何か女中に異常なようすが見受けられた。これには何か理由があろうとおもったかれは、あとで旅宿の主人を呼んで、静かに訊ねた。平素は作法のよかった女中が何かようすがおかしい。二回も客膳の汁をこぼした。こういうことは客にも不快を与えることだが、女中に何か異常はないのか、と。それに対して旅宿の主人は、その女中がかつて一人の子供をうしない、今一人残っていた郷里に置いてきた小学生の子供がとつぜん死亡したとの電報が今回来たので、あの女中は悲しみのあまり心が落着かず、その結果御客様に対しても粗そうをしでかしたのでしょうと答えた。その女中は平素から節約して、収入の一部をこの郷里の子供に送っていた、ということも主人は言い添えた。この話しを聞いたかれはたいへんこの女中に同情し、主人にむかい、どうかこの女中に一両日休暇をやってくれ、しかもどこへも行くところもあるまいから、自分に一晩その女中を貸してくれ。自分はその女中を芝居にでも連れて行って少しでも慰めてやりたいと言った。主人もよくものの判った男であったから、かれの提言を入れ、主人もともども三人でその晩その街にかかった芝居を見に行った。女中は芝居見物中、終始泣きながら芝居を見物していたというが、その後でかれはかれに随行の後輩、東郷実に次のように言った。「悲しみの淵にある彼女を芝居見物などに連れて行くということはある意味ではよくないと言われるかもしれない。しかし遠く故郷を離れ身内も近くにいない女中奉公の身では、たとえ休暇をもらっても宿では思う存分泣けもしないであろう。だから思う存分泣ける所と思って芝居に連れていってやったが自分の遣り方は間違っただろうか」と。かれの遣り方に対する批評はともかくとして、かれは心からこの心根の美しい女中の身の上に同情し、そのためにはかったのであった。この女中もこのこの立派な宿の客人の親切に、その心の悲しみは、とうてい消せなかったが心から感謝したのであった。(262~263)

 

 鑑三の新渡戸稲造宛の手紙を読めば、鑑三がどれくらい深く新渡戸を信頼していたかは明確である。タケの結婚に至るまでの迷い、葛藤、決意などを余すところなく打ち明けている。宮部金吾は札幌にいたから、直接会っていろいろ相談にのってもらったりしていたのが新渡戸であった。新渡戸は鑑三からタケを紹介されていたから、彼は彼なりにタケの人柄などを客観的に知っていたはずである。新渡戸は鑑三と違って激情型の人間ではなく、先に引用したエピソードからもわかるように同情型の人間である。同じキリスト教信徒とは言っても、鑑三と新渡戸とはその性格において対極的である。だからこそ鑑三は新渡戸にあつい信頼をおいて、きわめて個人的なタケとの心の葛藤をも率直に打ち明けていたのだろう。ところでこの新渡戸の手を、結婚して五ヶ月もたったタケが夫の目を盗んで握ったというのだから、ことは穏やかではない。はたしてこのことを鑑三は知らなかったのであろうか。知っていて、新渡戸と絶交することなく文通などしていたとすれば、それはそれで面白い。鑑三の評伝を執筆する研究者はおおかた鑑三の側に寄り添うか、または公平な立場を貫いて小説家的な自由奔放な想像力を働かせることを極力慎んでいる。が、男と女の関係においてきれいごとは通用しない。新渡戸は鑑三より一歳年下の優秀な青年であり、札幌農学校時代は鑑三と主席を争った仲である。この二人の性格を異にする将来有望な青年二人の中にタケを置いてみれば、小説家でなくともそこに潜在的な三角関係が存在していたと見ても大きな過ちとはならないだろう。

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