随想 空即空(連載64)内村鑑三の再臨説を巡って #ドストエフスキー&清水正ブログ# 清水正

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随想 空即空(連載64)内村鑑三の再臨説を巡って#ドストエフスキー清水正ブログ#

清水正

 正宗白鳥は執拗に内村鑑三について思いを巡らしている。白鳥はある時は完全な非キリスト教徒として、キリストの再臨説を断定的に否定している。が、この否定の言葉の内にも微妙なニュアンスが忍び込んでいる。もし白鳥が断固とした非キリスト教徒としての態度を貫いたとすれば、「内村鑑三」という批評は成立しなかったであろう。そこには青年期に鑑三の講演や著作に心酔した者の、単純に割り切れない複雑な思い、別れた女にいつまでも未練を残すような口吻がかいま見れる。白鳥の鑑三を巡っての文章は、角度を微妙に移行させながら対象を浮き彫りにしていく。白鳥の鑿は一義の彫像を構築するが、その鑿の柄頭を打つ力の違いや微妙な角度を見逃すことはできない。鑿の柄頭を打つ白鳥の右手に込められた様々の思いを受け止めながら、さらに鑑三論を見ていくことにしよう。

 

 内村は、古今の多くの識者の唱えているような霊魂不滅を信ずるばかりでなく、肉体そのまゝの復活を信じていたのであった。復活するほどなら、肉体を具えた復活でなければ意味をなさぬのである。肉体を離れて霊魂だけがふわふわと飛んでいるのでは、永遠の生命を願う人間の心の要求に添わない筈である。(376)

 

    復活の有無は人生の大問題であるが、復活して苛酷な審判を受けなければならぬとすると、肉体復活は有難迷惑である。私などは死後に復活して、地獄に於いてでも天国に於いてでも、知人の誰かに会いたいと思うことはないと云っていい。来世の復活なんかは信ぜず、現代的常識として人間は死して無に帰することを漠然と考えているに過ぎないのであるが、現代的常識などは甚だ浅薄空疎でありそうだ。内村などの肉体復活観を痴人の妄想として嗤う資格はないのである。(376)

 

  基督再臨とは異り、死後の復活信者は甚だ多いようで、単純にそれを信じて疑わないものも少なくないようである。田舎の老伝道師などに、自分の子供が死んだのを、文字通り、神に召されたと信じて、悲しみもしないものがある。非人情のようだが、そこまで徹してこそ信心甲斐があるのである。それに比べると、内村の復活観を読むと、感傷的で詩人的で、強いて夢を語っているらしく思われ、田舎伝道師などに比べると、所信が危かしく思われないこともない。(376)

 

 内村は、古今の多くの識者の唱えているような霊魂不滅を信ずるばかりでなく、肉体そのまゝの復活を信じていたのであった。復活するほどなら、肉体を具えた復活でなければ意味をなさぬのである。肉体を離れて霊魂だけがふわふわと飛んでいるのでは、永遠の生命を願う人間の心の要求に添わない筈である。(376)

 

    復活の有無は人生の大問題であるが、復活して苛酷な審判を受けなければならぬとすると、肉体復活は有難迷惑である。私などは死後に復活して、地獄に於いてでも天国に於いてでも、知人の誰かに会いたいと思うことはないと云っていい。来世の復活なんかは信ぜず、現代的常識として人間は死して無に帰することを漠然考えているに過ぎないのであるが、現代的常識などは甚だ浅薄空疎でありそだ。内村などの肉体復活は観を痴人の妄想として嗤う資格はないのである。(376)

 

  基督再臨とは異り、死後の復活信者は甚だ多いようで、単純にそれを信じて疑わないものも少なくないようである。田舎の老伝道師などに、自分の子供が死んだのを、文字通り、神に召されたと信じて、悲しみもしないものがある。非人情のようだが、そこまで徹してこそ信心甲斐があるのである。それに比べると、内村の復活観を読むと、感傷的で詩人的で、強いて夢を語っているらしく思われ、田舎伝道師などに比べると、所信が危かしく思われないこともない。(376

 

 彼は愛嬢ルツ子の死について述べ、その終りに、「幸福なる彼女」と題して、概括的感想を洩している。「生きて此世に残るは大なる恩恵であります。然し死に勝って此世を去るは更らに大なる恩恵であります。ルツ子は幸にして此最大の恩恵に浴しました」と云っている。彼女の両親は今日、愛する娘を天国に嫁入りさせたと云うのである。私などの感じ得ない境地である。死に勝ってこの世を去るというのも、言葉の綾でありそうだ。死に勝つような勇ましい気持で人は死ねるのであろうか。(370)

 

 内村鑑三は人間が死んでも復活すること、それも肉体そのままの復活を信じていたと言う。これに対して白鳥はどう思っていたのか。白鳥は「肉体復活は有難迷惑である。私などは死後に復活して、地獄に於いてでも天国に於いてでも、知人の誰かに会いたいと思うことはないと云っていい」と書いている。

 キリスト教の教義を信じない者にとっては、そもそも最後の審判もなければ天国も地獄もない。ましてや肉体そのままの復活など近代人にしてみれば妄想でしかない。しかしそれでは、白鳥は肉体そのままの復活を信じる鑑三に対して、全く正反対の立場を貫いているのかと思うと、「内村などの肉体復活観を痴人の妄想として嗤う資格はないのである」とも書いている。

 鑑三に対して白鳥は微妙な、あいまいな立ち位置を保っている。理性と知性に立脚する近代人の常識からすれば、肉体そのままの復活などは痴人の妄想でしかないのだが、白鳥はその〈常識〉に対しても確固たる根拠を持ち得ないでいる。常識の立ち位置から鑑三の復活説を見れば、そこに「感傷的で詩人的で、強いて夢を語っているらしく」思われるのだが、「人間は死して無に帰する」という現代的常識を甚だ〈浅薄空疎〉とも書いている。

 これらを読むと、白鳥は肉体復活説の〈痴人の妄想〉にも与しないが、同時に現代的常識の〈浅薄空疎〉にも与していないことになる。このあいまいさに白鳥自身がどれだけ自覚的であったかは分からないが、「内村鑑三」全編を読む限り、彼が鑑三の肉体復活説に肯定的でないことは明確である。しかし、白鳥の文章の厄介なところは、この〈明確〉を彼自身が明確なものとして読者に提示しないことである。白鳥は一見、鑑三の〈痴人の妄想〉に批判的なポーズをとりながら、この現代的常識が嗤って取り合わない〈妄想〉に、あいまいながらも親和的な感情をもぐりこませている。鑑三の復活説に最も遠い、あるいは対極に位置する言説を吐きながら、その言説に全面的な信頼を寄せることができずにいる。〈浅薄空疎〉な常識が、〈痴人の妄想〉を嗤い切れずにさまよっている。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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表紙

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