随想 空即空(連載8)

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随想 空即空(連載8)

 ポルフィーリイはロジオンに向かって五カペイカ並の分別など捨て去って、キリストの言葉に飛び込めと言う。キリストの言葉とは「私が復活であり命である。生きて我を信じる者は死ぬことがない」という言葉である。ヨハネ福音書の中の〈ラザロの復活〉の場面を読んでくれと頼んだのは二人の女を殺害して罪の意識に襲われることのなかったロジオンであり、頼まれたのは日々生活のために姦淫の罪を犯している娼婦ソーニャである。この場面も一筋縄ではいかない場面で、わたしは何回も批評しているが、しかし何回批評しても批評し終えたという思いを抱くことができずにいる。

    この〈ラザロの復活〉朗読の場面では、ロジオンは神を信じていない者としてソーニャの傍らにあるが、しかしロジオンはポルフィーリイと初対面のとき、はっきりと神を信じている、ラザロの復活も文字通り信じていると口にしている。ロジオンは謂わば矛盾だらけの青年であるが、ソーニャの〈ラザロの復活〉の場面では、深く沈黙を守ってキリストの言葉に対して明確な返答を回避している。ポルフィーリイの言葉で言えば、キリストの〈復活〉と〈命〉であることに対して、五カペイカ並の分別を固守していたというわけだ。

 『ベラミ』の老詩人ノルベール・ド・ヴァレヌは「すべて宗教は愚劣だ」の一言で片づけている。が、『罪と罰』の主人公ロジオンは思弁の側に立って、一方的に神を否定することはない。ロジオンはソーニャの前に突然その身を屈することのできる苦悶の人であり、渇いた人である。ロジオンはソーニャに人類の全苦悩を背負った〈キリスト〉を感じ、彼女の前に跪拝することのできる〈ものに感じる心を持った〉(マルメラードフのロジオンに向けられた言葉)青年なのである。この十九世紀中葉の首都ペテルブルクに現出した〈一人の青年〉は彼自身もまたキリストのイメージを賦与されていたが、当分の間は思弁の領域で分裂的な精神世界を生きなければならなかった。

 わたしは『罪と罰』を五十年以上に渡って読み続け、批評し続けている。何回読み返しても飽きるということがない。読む度に、批評する度に新たな発見がある。解読の快楽というものがある。しかし読み続ける根本にあるのは、やはりキリストの問題である。キリストの復活と命に関する言葉の前で、わたしは何十年も沈黙を守っている。わたしの常識は〈ラザロの復活〉を受け付けないし、キリストの言う永遠の命も受け入れがたい。すべての宗教を愚劣と見るのは理性であり知性であるが、そもそも神を信じるのは背理であるから、信仰は理性の力を超えている。キリストの言葉をそのまま信じるためには理性や知性を捨て去らなければならない。はたして人間は理性を捨ててまでキリストを信じることに意義があるのか。理性は神に対しては懐疑的にならざるを得ない。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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表紙

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