随想 空即空(連載9)

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随想 空即空(連載9)

 

 五カペイカ並の分別を捨て去って、いきなりキリストの言葉に飛び込め、と言われても、わたしは五カペイカ並の分別を捨て去る気にはならない。わたしは〈五カペイカ並の分別〉は生きる上で大切だと思っている。そもそもロジオンはこの〈五カペイ並の分別〉を蔑ろにしていたからこそ、悪魔の誘惑にかかって二人の女を殺害するようなことになったのではないかとさえ思っている。ロジオンの観念とその行動に若い頃のわたしも深く影響されたが、しかし〈五カペイカ〉の現実を蔑ろにしたことはない。もし肉体存在でなければ、現実のしがらみにとらわれることなく自由な意識生活を送ることができたのにと、若い頃のわたしはいつも思っていた。しかし、わたしは肉体を伴った意識存在であることを免れることはできない。

 座禅と瞑想によって、意識が肉体から解脱するなどということを信じたことはない。従って新興宗教に関心を抱いたこともない。べつに修行など積まなくても、わたしのからだは四十三キロでヨガ行者のように痩せていた。当時、ガンダーラ美術の展覧会が日本で開催されていたが、そこに骨と皮だらけのブッダの彫像が展示されていた。わたしはそのブッダ像に衝撃を受けたが、同時に親近感を覚えた。修行の厳しさを痛感した。が、出家して僧侶になろうという思いに駆られたことはない。わたしは〈五カペイカ並の分別〉の大切さを、そうそう簡単に捨て去ってはいけないと思っている。

 ロジオンの仕出かした愚行を凝視せず、還暦を過ぎてまでロジオンの観念と行為を美化する者があるが、しかし彼自身が軽蔑している〈五カペイカ並の分別〉に彼自身がしっかり乗っかって生きているのを見ていると実に滑稽である。ロジオンはマルメラードフの口からソーニャの存在を知って、〈あれ〉(踏み越え=アリョーナ殺し)を終えてからソーニャにそのことを打ち明けようと思う(ただし、このロジオンの内心の思いを作者は明確に記していない)。

 ロジオンは自分もまたソーニャと同じく踏み越えた後でなければ、ソーニャと出会うことはできないと思っていた。ロジオンと同じような〈踏み越え〉をする覚悟もない読者が、ロジオンとソーニャの復活の曙光に輝く場面を見て感動することぐらい、欺瞞を感じさせないものはない。キリストの言葉に従えない者は、従えない者として正直でなければならないだろう。少なくともわたしはそのような態度でドストエフスキーの文学を読んでいる。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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表紙

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目次

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