有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲) 随想 空即空(連載7)
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清水正・画
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随想 空即空(連載7)
〈心の貧しい人々〉に次いで、マタイは〈悲しむ人々〉〈へりくだった人々〉〈義に餓え渇く人々〉〈憐れみ深い人々〉〈心の清い人々〉〈平和を造る人々〉〈義のために迫害された人々〉(引用は聖書協会共同訳)が幸いであることをイエスの言葉として書き記している。これらの垂訓自体はどんな人間でも素直に受け入れられるだろう。問題はこれらの人々が〈神〉を信じない場合はどうなのかということである。キリスト教の神が存在しようがしまいが、人間社会を生きるうえで、こういった人々の心持ちを素直に受け入れることに多くの日本人は賛同するであろう。が、全能の神に対して絶対帰依を要求されたりすると、すぐに拒否反応を示すのも大半の日本人なのである。
イエスの激しい妥協のない信念は、多くの人間の反感を買ったことは疑いない。現にイエスは逮捕され、裁判にかけられ、死刑を宣告されている。新約聖書をドストエフスキーの文学を解読する眼差しで読めば、イエスの人間としての生涯は実に感慨深いものがある。ゲッセマネの祈りや十字架上での最後の言葉などは、彼の死刑に至る壮絶な生に対する戦慄を禁じ得ない。
ドストエフスキー文学を理解する上で聖書を読むことは必須である。わたしも聖書を読むが、それはキリスト者としてではなく、かなり自由に、文学作品を読むように読む。『ヨブ記』などは、最後の最後に全能の神が現れるまではかなりリアリティのある作品として読むことができる。ヨブが神の言葉に従わないままであったら、おそらく『ヨブ記』が聖書に収められることはなかっただろう。
神の存在を受け入れるかどうかは別問題として、『ヨブ記』の作者が人間と神をめぐって究極的な内的対話を繰り返していたことは確かであろう。聖書の恐ろしさは、人間探求において無神論者のそれをはるかに凌駕していたことである。『ヨブ記』を収録するなら、ドストエフスキーの全作品を聖書に収録してもかまわないということになろう。聖書編纂者たちの懐の深さを思い知る。
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お勧め動画・池田大作氏の「人間革命」をとりあげ、ドストエフスキーの文学、ニーチェの永劫回帰・アポロン対ディオニュソス、ベルグソンの時間論などを踏まえながら
人間のあるべき姿を検証する。人道主義(ヒューマニズム)と宗教の問題。対話によって世界平和の実現とその維持は可能なのか。人道主義と一神教的絶対主義は握手することが可能なのか。三回に分けて発信していますがぜひ最後までご覧ください。
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「清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。
令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ
発行日 2021年12月3日
発行人 坂下将人 編集人 田嶋俊慶
発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
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