星エリナのほろよいハイボール（連載118）

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星エリナのほろよいハイボール（連載118）

袴を借りる
星エリナ
　

　1月14日に卒業制作を提出した。久しぶりに学校へ行くと4年がたくさんいて、なんとなく安心した。こんなに同学年、いたんだよなあ。昨年度まではずっと先輩方にべったりで甘ったれだった。今年度は自分が思っていたより後輩とたくさん話をした。3年生だけでなく1年生とも話をした。でもやっぱり先輩が好きで院の先輩や助手さんとたくさんお話をした。授業はいっつも一人で受けていたから、同学年の人と学校で会うなんてほっとんどない一年間。寂しかったけれど、違うことで充実はしていたし、シューカツも思うようにいったし、満足、だったのかなぁ。
　大学4年間を締めくくるイベント、卒業式。卒制を提出すると、なんだかすぐそこにあるイベントのように思う。でもまだ卒博もあるんだけどね。卒業式のあとにはパーティーもあるんだけどね。でもでもやっぱり、きっちりかっちり、〆って感じがするよね、卒業式。そのための準備をしはじめた。
　どんな格好しようかな。やっぱり女の子は袴だよなあ。と思いつつ、持っている着物を見る。とある柄の着物が目に付く。柄は卒業式まで内緒。私はとっても気に入った着物を片手にいろいろと考えた。着付けはまぁ、自分でやるか。叔母にも手伝ってもらえば大丈夫だろう。髪型もまぁ、自分でやるか。ぐりんぐりんのアップはできないけど、髪飾りをつけちゃえばなんとでもなる。靴は持ってるブーツでいいかな。襦袢もある。半幅帯もある。とすると必要なのは……。いろいろと考えてみて思う。
「あ、袴持ってないや」
　そりゃそうだ。袴を持っている人ってそんなにいる？　大抵の人は成人式のとき着物を借りたとこのサービスで袴もレンタルできちゃうらしいけど。私、成人式は従姉妹の振袖借りたんだった。成人式はしっかりやりたくて、埼玉県に住んでるのに東京の美容室予約して着付けもヘアメイクもしてもらった。正直、かなり満足のいく仕上がりだったけど、大雪でみんなに見せることはできませんでした。
　そういうことで、私は袴のレンタルを探しに行った。地元川越は毎月着物デーをやったりしていて、一日着物レンタルとかが多いから、地元の着物屋などを当たってみた。だけど、卒業式の袴は見つからなかった。大抵が、街娘っぽい着物とか、男物の袴ならたくさんあった。リサイクル着物を当たっても、女物は滅多に出回らないらしい。
　結局、安く済ませようっていう企みは失敗し、デパートに入ってる大きな着物屋でレンタルすることになった。色を悩んでいたので、紺や紫、ぼかし入りなどを合わせてもらうことにした。紺は結構シンプルで、人気らしい。それから紫。紺より明るめな印象。これなら私が持っている着物とも合いそうだ。そう思いながら私は気に入った表情をしていたらしく、着物屋さんもニコニコと笑って言った。
「すごくお似合いですよー、紫は似合わない人もいるんですけど、お客様顔がはっきりしていて派手だからとても似合いますー」
　……それは、誉めているんですよね？
　いやいや、知っていますけどね、顔が派手なこと。しかも目が良い（両目裸眼で１，５）からいろんな人のいろんなものが気になっちゃって見ちゃうから目つきが悪いとか眼とばしてるって思われちゃうのも。後者は関係ないんだけど、まぁちょっとショックを受けてとにかく袴を確保した。

　



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