星エリナのほろよいハイボール(連載60)

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星エリナのほろよいハイボール(連載60)


コンビニでバイトする
星エリナ

 
 高校三年生の冬。コンビニでアルバイトをはじめた。2月にリニューアルオープンする予定の店舗で、私はそのオープニングスタッフ。オープン前に、別の店舗での研修を一週間受ける予定だ。
 そして、研修初日。まず迷子になる。実は研修ははじめ、地元の店舗で行う予定だったのだが、人数が多くなったため、電車で5駅先の広い店舗ですることになったのだ。簡易的な地図が載っているが、私、地図がとっても苦手。その駅前にもたくさんコンビニがあったけれど、どこも研修先ではなかった。時間がない。警察署へ行く。簡易地図を見せる。
「あの交差店のやつじゃないかな」
「いやでも、あそこさっき行ったら違うって言われたんです」
 当時持っていた携帯電話はガラケーGPS機能は一応あったけど、あまり使ったことがなくてわからない。警察のお兄さんに別の地図をもらって歩く。その地図でなんとかたどり着く。簡易地図には徒歩5分なんて書いてあったけど全く嘘。早足で歩いてきたけど、15分はかかった。
 はやめに家を出たけれど、やっぱり到着したのは一番最後。社員さんには遅いよ、と怒られたけど、自己紹介のときには嫌味をこめて「すごくわかりにくい地図だったので迷子になりました。遅れてすいません」と言ってやった。嫌な女子高生。
 それから研修がはじまり、周りの人とも仲良くなった。大学生のお兄さんと同い年の女の子、ユーモアのある主婦。研修も楽しかった。
 オープン前日。開店するための式が行われ、社員の方が何人も来た。私たちも参加して、これから頑張っていきましょう、と気合をいれるものだった。実際、店長はこの店にかなり力をいれていて、私たちにも期待してくれていて、すごくいい環境だと思った。だからこそ、オープンしてからの忙しさも頑張ってこれた。
 だけど、次第に店長の異常な力の入れ方に、みんな引いていった。シフトが終わって、上がったはずの主婦たちが、1時間も店長と話をしている。何か問題があったのかな、と思っていた。だけど、その主婦から夜にメールがあった。
「今日も店長の話ずっと聞いて帰るの遅くなっちゃったよ。はやく帰ってご飯作らなくちゃいけないのに」
 特に問題があったわけではなく、店長のビジョンやら目標やらを延々と聞いていただけらしい。悪いことではないけれど、ちょっと長すぎ。あなたの話を聞いていても、自給は発生しないのよ。
 店長だけでなくマネージャーもちょっと行き過ぎな人だった。マネージャーは店長の奥さんで、三人の子どもを育てながら、店にも出てきていた。マネージャーは怒り方が異常だった。
「あの客なんなの? きもちわるい。頭おかしいんじゃないの?」
 たしかにその店は、精神病院のすぐ近くにあって、障害がある方とかもよく来ていた。だけど、店に出ているときにそんな言い方しなくても。そんなだったから、オープニングスタッフは一人、また一人とやめていくことになる。




   

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