星エリナのほろよいハイボール(連載103)

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星エリナのほろよいハイボール(連載103)

氷水に砂糖を入れる
星エリナ

 

 私の両親は共働きだから、小学校から帰ってきても家には誰もいなかった。兄は学童へ通っていたけれど、人見知りの激しい私は学童保育を嫌がった。小学校低学年のころの私は結構内向的で、道に迷ったらすぐ泣くタイプ。逆に兄は小学生のころは活発で、友だちに振り回されたりもしていたけれど、道に迷ったらすぐ大人に話しかけて道を聞くタイプだった。ちなみに今では逆転している。私はずばずば他人に声をかけるが、兄は人に声をかけたり電話をすることがすごく苦手になった。
 さて、小学校低学年の私は、一人家にいてもつまらないし、両親も心配した。だから私の家から歩いて30秒ほどのところに住んでいる祖父母の家に毎日通っていた。祖父母は私にとても優しかったし、私は二人からいろいろなことを学んできた。祖母は簡単な料理を教えてくれた。小学校一年生のときからご飯を炊くのは私の役目。おやつにワンタンスープをちゃちゃっと作れちゃう私を、料理が苦手な従姉妹はびっくりしていたらしい。食事のマナーをはじめとする生活のマナーを教えてもらった。祖父は私をとことん甘やかした。何をやっても「いいよ」と言ってくれる人だった。私が学校から帰ってくると必ず緑色の缶からたくさんのお菓子をくれるのだ。中身はいっつもかりんとう芋けんぴ、おせんべい。昔ながらの和菓子。
 お菓子を食べながらテレビアニメを見て、たまにワンタンスープを作って食べて、両親が帰ってくると家で晩ご飯を食べる。こんな生活をしていればまあ当たり前に誰でも太るわけで。小学校6年間、私はぶくぶくと太っていったのだった。二の腕はプニプニを通り越してブニブニだし、おなかもいい音がしそうにパンパンだった。従姉妹は嫌味をこめて、当時流行っていたデブのお笑い芸人に似ていると言った。
 太っていた原因はその食生活であるが、一番の原因は砂糖だったと思う。もちろんお菓子にも砂糖はかなり使われている。だがそれだけではない。祖母はあらゆるものに砂糖を加えていたのだ。結構多めに。紅茶に砂糖は当たり前だけど、祖母は3杯入れていた。だから私も祖母にならって3杯だった。ちなみに今では1杯でいい。お餅には醤油と多めの砂糖だし、信じられないけれど麦茶にも砂糖を入れていた。麦茶に砂糖でコーヒーの味がするみたいですよ、やってみては? 私は飲んだけど、ただ麦茶に砂糖入れた味だった気がする。
 最終的には、氷水に砂糖を入れていた。夏は冷たくて美味しかったように思う。ほろほろと溶けて水に消えていく砂糖を見ていた。本当に砂糖が好きなんだなー、とそのころはただ思っていた。
 祖父母から教わったことは他にもある。戦争だ。二人は戦争体験者。祖父はあまり戦争について話してはくれなかったけれど、祖母は空襲の日のことをよく聞かせてくれた。当時は庭の草を食べたとか、全部冗談かと思っていた。もしかしたら、それで氷水に砂糖を入れていたのかな。ジュースなんて手に入らないから、甘くて冷たい飲み物を自分たちで作った、当時の知恵なのかもしれない。
 そんなことを思って久しぶりにこの砂糖水を作って飲んでみたけれど、懐かしいようで、あんまり美味しくはない。
  

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