小林リズムの紙のむだづかい(連載109)

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紙のむだづかい(連載109)
小林リズム

【彼を傷つけてしまった理論】

 失恋すると必ず「なんであんな人と付き合っていたんだろう。バカみたい」と一蹴し、バッサリと切り捨てる友人がいる。交際中はこれでもかというくらいにラブラブで、のろけまくっていたのに、別れた途端にそうだから、その変貌ぶりにはついていけない。
 付き合っている間は「彼はわたしのことが相当好きで…」とか、もらったプレゼントの紹介だとか、愛されている幸せな女というアピールがものすごいのだけど、別れた途端にそれらの過去すべてが汚かったもののようにけなすので、見ていて清々しいほどだ。その言い様があまりにも爽快で、むしろ「まだ好きだからそういうこと言うのかな…」と思ったのだけど、どうやら彼女の辞書に“未練”という言葉はないらしい。自分の選択が間違っていなかったという確固たる自信と、幸せな女になることの執念のようなものが感じられるのだった。

 これとは反対に、失恋を語るときに「彼を傷つけちゃったから…」と苦しそうな顔をする人がいる。はじめの頃こそ“わたしがフラれたんじゃなくて、わたしがフッたのよ”というアピールなのかと思っていたけど、どうやらそれだけではないらしい。フッたという加害者的な立場を「彼を傷つけちゃって責任を感じているの…」と後悔しているスタンスをとることで「心優しい女の子」を演出しているのだった。むしろ、「彼を傷つけている自分がものすごく傷ついている」というわけのわからない状態に酔って、加害者と被害者が入れ替わり、周りからは「弱くて繊細で優しいから傷つきやすいんだね」というポジションを得ていく。

 たとえば、本当に相手を傷つけていることを後悔しているのなら、間違っても「いっぱい傷つけてごめんね」なんて公の場にツイートしたりしない。まして「絶対に幸せになってね」なんてそんな無責任なことは言えない。でも、結構こういうことしたくなったりするんだよねぇ…。人を傷つけちゃった自分、後悔している自分、愛されていた自分、を見せつけたい心境になるときって…。と思って、ツイッターで「傷つけてごめんね」というワードで検索をかけてみたのだった。
 やだ、いっぱいいるではないですか。ちょっと、びっくりするくらいにいる。140文字を駆使した文章で前半は「楽しかった過去」紹介、中盤は例の「傷つけてごめんね」の文字、そして最終的には「今までありがとう!」という感動のフィナーレにもっていっているのだった。うーん、ウマい!
 面白いことに、こういうことをするのってほとんど女子しかいない。自分の恋愛に凹凸をつけて物語にしたいのだ。ストーリー性のあるお話にして、自分史のなかで立派に完結するドラマを残したい。もちろん、ヒロインは自分。
 え?彼女は本当に彼を傷つけたことを苦しんでいるって?何をおっしゃるのやら。彼女たちはそんな「加害者になってしまった自分」「相手に影響を与えてしまった自分」に酔いしれているだけです。微々たる罪の意識は感じているかもしれないけれど、相手に向けた優しさより自分に向けた思いやりのほうが大きい。何を隠そう「いっぱい傷つけてごめんね。今までありがとう。絶対幸せになってね」という文字を残したことのある私がいうのだから、間違いないってものでしょう。

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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