高田渡(フォークシンガー)を読む

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林芙美子の『浮雲』論を執筆した後、電車の中で「こだわり人物伝 高田渡を読む。氷結を飲みながら、なぎら健壱の語る高田ワールドへ参入。高田渡とわたしは同じ年齢。風貌はまさに都会に生息する仙人のようで、同世代の誰よりも老けている。残念ながら五年前に五十六歳で亡くなった。
高田渡のマイペースの生き方には心から賛同できる。一度くらいはこういった男と焼酎を一緒に飲みたかった。語り部なぎら健壱も味のある男で、親しみを感じる。高田の歌に関してなぎらは「泥臭さの塊なんだけど、詞が斬りつけてくる感じで、アタシは目からうろこが落ちました」と語っている。いい言葉だ。
テレビの映像で見る高田は圧倒的な存在感をもっていた。今の時代、中途半端に軽くて、調子のいいジジイばかりで、頑固に自分の生き方を貫いている年寄りにはめったにお目にかかれない。本をたくさん読んで知識はあるが、魂にひびく言葉はなく、いたずらに饒舌な奴ばかりが増えている。
ひさしぶりに、読んでいて気持ちよく酔えた〈人物伝〉であった。


NHK知る薬「高田渡 孤高のフォークシンガー」より