随想 空即空(連載162)兵役拒否を巡って

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随想 空即空(連載162)兵役拒否を巡って

清水正  

 

 井上哲次郎キリスト教の本質を冷徹に見据えながら論を進めていく。例えばニコライ堂で知られるロシア正教に関して次のように書いている。

 

 駿河台の上に高大なる建物あり、兀として雲表に聳え我宮城を俯瞰するものゝ如し、是をニコライの礼拝堂となす、然るに此礼拝堂にて教ふる所は抑々如何なる事か、世人は會て注意せざるが如しと雖も、又大に我邦の国是に関するもの之れなしとせず、羅馬加特力教にては、羅馬法王を以て頭とすれども、露西亜の宗教にては露西亜帝を以て頭とす、露西亜帝は啻に露西亜帝国の元首たるのみならず、又露西亜の宗教の頭なり、我邦人の中一人ニコライの宗旨に帰依すれば一人だけ露西亜国に従属するも同様なり、十人彼れに帰依すれば我邦は十人を失ふ訳なり、况して彼れに帰依するもの、已に我邦の言語に通じ、我邦の事情を知るものなれば、我邦の不利実に浅少なりとせざるなり、然るに我邦人が幻夢中に行動するが如く、毫も是等の事を執念せざるは最も危険なりと謂はざるを得ざるなり、又彼のニコライ礼拝堂のある地面は、我邦より永世貸与したるものなりと聞く、ニコライは実に我邦の特恵を受けたるものなり、然るにニコライの処より毎月刊行する正教新報と題する雑誌あり、少しく己れに不利なることを言ふものあれば、如何なる人と雖も、忽ち之れを誹謗することを務む、実に耶蘇の敵をも愛すべしと云へる教に戻るものと謂ふべきなり、然れどもニコライ教派の如きは、蓋し他の耶蘇教徒と頗る其趣を異にするものあるを以て此れに因りて一切の耶蘇教徒を評論するを得ざれども、耶蘇教は欧米諸国に行はるゝ所の宗教なるゆえ、之れを信ずる者は自然其教に由りて出づる所を本国の如く思惟し、却て我邦を外国の如くに見做すの傾向を生ぜざるを得ず、且つ其師とする所の宣教師も亦欧米人なるを以て、教育を受くる間に漸々教師の思想感情を伝授し、遂に己れ自らも布教の為めに我邦に来る者の如き状態を露はすに至るなり、然かのみならず、耶蘇教徒は唯一の神を信じ、此神に対して之れを言へば、如何なるものも差等あることなし、天皇も穢多も同等と見做し、唯々其奉ずる所の神のみを以て至尊無上となす、是れ実に耶蘇教徒が屡々聖影に対し、不敬なる所行ある所以なり、(58~59)

 

 一口にキリスト教とは言ってもカトリックあり、プロテスタントあり、ロシア正教あり、しかもうるさいことを言えば教義に関しても様々な解釈がある。同じプロテスタントで何百もの教派が存在している。従ってキリスト教の教義に踏み込めばとんでもない迷宮世界をさまようことになろう。わたしは教義の迷宮に迷い込む気持ちはさらさらないので、単純に原理的な次元でキリスト教を見ている。カトリックプロテスタントロシア正教も、その信者が信じている神は唯一絶対の神で、他の神は認めないということでは一致している。ここが我邦の神道とは根本的に違っている。謂わば神道一神教でさえ内に抱え込むおおらかさを持っており、最初から他の宗教を拒むことはない。

    問題はキリスト教国と我邦が戦争になった場合である。憲法において信教の自由が認められているとは言え、国家的次元での有事の場合においては、その自由はたちまち紙に書かれた非現実的な理想と化してしまう。この憲法上の〈信教の自由〉は、キリスト教の〈愛と赦し〉と同じで、平和時においては別に実効性を持っていなくとも通用するが、いざ戦争に突入すれば単なる紙の上の言葉、実効性のないきれいごとだったことを晒すことになる。非戦論を唱えていた鑑三が、弟子宗次郎の兵役拒否を認めなかったことの欺瞞を覆い隠すようなさらなる欺瞞に与してはならない。井上哲次郎ロシア正教カトリックプロテスタントとは異なった教義をもつことをわきまえた上で、あえて耶蘇教を原理主義的な次元で問題にしていることを失念してはならないだろう。ここからキリスト教と国家の問題に照明を与えないと欺瞞の罠に陥る危険性が大いにあるのである。

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