プーチンと『罪と罰』(連載42)

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プーチンと『罪と罰』(連載42)

清水正

 

 新約の神キリストは〈歯〉には〈歯〉をではなく、汝の敵を愛し赦せと説く。上着を取られたら下着を与えよ、右の頬を打たれたら左の頬を出せというのがキリストである。が、アリョーシャはこのキリストの教えに背き、将軍を銃殺にすべきだと口にしている。この言葉はアリョーシャがキリスト者の仮面をかぶった反キリストであることを端的に示している。イヴァンはそのことを指摘し糾弾する代わりに、即座に〈ブラボー〉と叫ぶ。イヴァンは眼前の〈キリスト者〉の内部に〈悪魔の卵〉が潜んでいることに狂喜の声を発し、鋭く、否、やさしく皮肉をまじえてアリョーシャを愛称(アリョーシカ)と父称カラマーゾフ)で呼んでいる。

 イヴァンは表向き徹底して神を否定し、神の創造した地上世界の様々な不条理、特に無辜な子供たちの虐待と殺害を提示し、神に向けて抗議の矢を放ち続けた。アリョーシャは蒼白な顔を歪め、小さな声で〈銃殺〉を宣告した。この時、アリョーシャは殺されたわずか八歳の子供とその母親に寄り添い、限りのない憐憫の情にうちふるえている。ドストエフスキーの描く人神論者の多くが、心の底から神を求めている。彼らの求める神は、この地上の世界にあって真理・正義・公平を実現してくれる絶対存在であって、無辜な子供の虐待・殺害を黙って認めているような神ではない。修道僧アリョーシャも神に求めているのは、真理・正義・公平であり、その意味では神に反逆の狼煙をあげる〈人神論者〉と変わりはない。

 アリョーシャは冷静冷徹な理知の人ではない。ここで想起するのは地下生活者の、直情径行型の馬鹿ばかりが行動家になれる、といった言葉である。アリョーシャは謂わば直情径行型の青年であって、理知の働きよりも感情が先走ってしまう多感な修道僧なのである。

 アリョーシャはイヴァンの話を聞いて、殺された子供や母親の苦しみ、悲しみ、絶望に寄り添って怒りのマグマを内攻させるが、殺した将軍の内部世界に参入することはない。生殺与奪の権利を、よりによって八歳の召使いの子供に行使してしまった将軍の心理や心情はまったく省みられることはない。権力を恣意的に行使する将軍は村の〈絶対者〉であり、召使いは彼に支配統治された〈奴隷〉でしかない。〈キリスト者〉アリョーシャの内部に〈悪魔の卵〉が潜んでいるなら、この残酷非道な絶対者〈将軍〉の内にも〈神〉が潜んでいてもよさそうなものではないか。

 事件後、将軍は〈禁治産者〉となったということであるが、イヴァンはその件に関して詳しい説明をしていない。単なる歳のせいでボケてしまったのか、それとも良心の呵責に襲われた結果なのか、真実は霧の中である。いずれにせよ、描かれた限りでみれば、アリョーシャは将軍に対して微塵の同情を寄せてはいないし、「復讐するは我にあり」(「ローマの信徒への手紙」12章18-21節。復讐は神にまかせよ、という意味)といった〈キリスト者〉らしき言葉を発するわけでもない。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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表紙

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