プーチンと『罪と罰』(連載40)
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清水正・画
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イヴァンは最後にわずか八歳の召使の子供が、石投げ遊びで将軍の飼っていた犬の足を傷つけたことで酷い罰を受けたことを語る。それは十九世紀初葉、農奴制の敷かれた暗黒時代のことで、この将軍は立派な縁者知人を多く持った金持ちで、退役後は自分の家来に対して生殺与奪の権利を獲得した者のように振る舞っていたそうである。犬を傷つけた子供は将軍の命令で逮捕され、一晩中、牢内に押し込められた。翌朝、どのような残酷な刑が執行されたか。次にイヴァンの語ったことをそのままに紹介する。
将軍は馬にまたがって、正式の出猟のこしらえでお出ましになる。そのまわりには居候どもや、犬や、犬飼や、勢子などが居並んでいるが、みんな馬上姿だ。ぐるりには召使どもが、見せしめのために呼び集められている。その一ばん前には、悪いことをした子供の母親がいるのだ。やがて、子供が牢から引き出されて来た。それは霧の深い、どんよりした、うそ寒い秋の日で、猟にはうってつけの日和だ。将軍は子供の着物をはげと命じた。子供はすっかり丸裸にされて、ぶるぶるふるえながら、恐ろしさにぼうっとなって、うんともすっとも言えないのだ……『それ、追えい!』と、将軍が下知あそばす。『走れ、走れ!』と勢子どもがどなるので、子供は駆け出した……と、将軍は『しいっ!』と叫んで、猟犬をすっかり放してしまったのだ。こうして母親の目の前で、獣かなんぞのように狩り立てたので、犬は見る間に子供をずたずたに引き裂いてしまった!(上巻・330)
最初に読んだ時から衝撃だったが、それは今でも変わらない。引用するのさえはばかれるような残酷でおぞましい出来事である。主人の飼い犬を傷付けたのだから、子供の刑は当然だと感じる者はまさかいないとは思うが、この時代、つまり農奴制の敷かれていた十九世紀初めにおいては、地主の権力は絶対であり、どんな理不尽をも受け入れざるを得なかったのであろうか。
それにしてもわずか八歳の子供を牢から引き出して、猟犬に食い殺させるなど信じられない蛮行である。因みに米川正夫は〈всего вοсьми лет〉を「やっと九つになる」と訳しているが、わたしは「わずか八歳」と見たい。高橋保行は「八という数字は、永遠、来世、天国、神の国という意味を持っている。これは、天地創造をあらわす数で、この世が完璧で善であることを示す七に、唯一の神をあらわす一を加えたときにできる。/キリスト教は、キリストをこの八の化身とする」(講談社学術文庫『ギリシャ正教』215)と書いている。わずか八年間しか生きなかったこの〈子供〉を〈キリスト〉の化身と見れば、将軍は神を殺した大罪人ということになる。
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エデンの南 清水正コーナー
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「清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。
令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ
発行日 2021年12月3日
発行人 坂下将人 編集人 田嶋俊慶
発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
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