日芸創設者・松原寛の著作を読み返す。

日芸創設者・松原寛の著作を読み返す。

今日は久しぶりに松原寛の本を読み直す。

三年前、日大病院に入院中、入手できた本はすべて読み、450枚の松原寛論も執筆した。これは「日藝ライブラリー」松原寛特集号に掲載した。

松原寛は京都帝国大学哲学科を卒業した哲学者で、著作も二十数冊あるが、すべて五十年以上にわたって絶版状態にある。

松原寛の本はいわゆる書斎派の学的哲学というよりは、激しい内在的な欲求によって自在に書かれている。哲学、宗教、芸術、芸能から身辺雑記に至るまで、幅広く、熱く語っており、そこに最大の魅力がある。

まさに松原寛は市井の哲学者、現代のソクラテスぶりをいかんなく発揮している。

今回読み直したのは『哲学への思慕』に所収の「愛兒に與う」と「別れし妻に與う」の二篇。一読すれば松原寛、只者ではないことがすぐにわかろう。分別臭い、頭でっかちの思弁家ではなく、わが魂の震えをもって、ニーチェの言うわが血によってものを書く本物の哲学者なのである。松原寛の著作には例外なく血のしたたる「わが魂」が躍動している。

わたしは今後も徹底して松原寛の本を読んでいこうと思っている。

また、日芸の学生はぜひ、創設者松原寛先生の著作を読み、日芸魂にじかに触れてもらいたい。絶版状態にあってなかなか入手できない本を苦労して探し出すのも必要である。わたしは六年ばかり日芸の図書館長を務めたが、学生時代はもっぱら早稲田や神田の古書店街を歩き回って、本を購入した。目的の本を歩いて探す楽しみ、苦労して手に入れた本の一冊一冊に懐かしい風景がまとわりついている。