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矢代羽衣子さんの『うちには魔女がいる』は平成二十六年度日本大学芸術学部奨励賞を受賞した文芸学科の卒業制作作品です。多くの方々に読んでいただきたいと思います。
矢代羽衣子
うちには魔女がいる(連載13)
おかえりなさい、どうぞ召し上がれ
祖父がどったんばったんと大きな音を立てながら応接間の掃除を始めると、ああ、もうすぐお盆なんだなあ、としみじみする。
大きくて立派なソファを隣の部屋に放り込み盆棚を作れば、いつもの部屋はすっかり盂蘭盆会バージョンに早変わりだ。行燈を組み立てて灯りをつける。途端に色とりどりの光の玉を周囲に振りまきながらくるくると回るその様を見て、内心「お盆ディスコ」と呼んでいるのは秘密だ。
最近は夏の暑さがどんどん厳しくなって、墓参りに行くのにも一苦労である。
例年魔女と姉さんは早くに起きて、その他の家族よりも一足先に掃除に行くのが常だが、毎回脱水症状で倒れるんじゃないかと思うほど汗だくになって帰ってくる。暑くなる前に終わらせたいからと年々集合時間が早くなっていっているらしい。(因みに昨年は早朝五時集合だったそうだ。)
融くんと我が家のお墓は隣同士だ。今だってなんだかんだと四六時中一緒にいるのに、死んだ後も腐れ縁かと思うと、嬉しいようなむずがゆいような複雑な気分になる。魔女と姉さんはきっと毎日のように井戸端会議をしているに違いない。
なんとなくみんなで待ち合わせてお参りをして、お昼を食べて、なんとなくそのまま解散する。が、これで終わりかと思ったら大間違い。魔女の仕事はこれからが本番である。
にんじんピーマン茄子かぼちゃ、パプリカにゴボウ、れんこん。色鮮やかな夏野菜には衣を付けずに、フライパンに薄く引いた油に投入する。ジューッという小気味良い音が飛び跳ねた。テキパキとキッチンを泳ぎ回る魔女の背中を眺めていたら、お腹の虫が情けない声をあげた。
食欲に負けて魔女の手元を覗き込むと、夏野菜の揚げ浸しに、冷しゃぶサラダ。キノコと野菜の炊き込みごはん。それらが大きな皿にドン! と乗っているのを見て、めずらしいな、と思う。魔女の作るごはんはいつも品数が多くて、所謂大皿料理というものはあまり出てこないのだ。
「大皿でみんなで食べると、田舎料理っぽくて雰囲気出るかなって。たまにはいいでしょ?」
田舎料理。何とも美味しそうな響きだ。
お盆時期はいつもの面子で毎日ウチに集まって、盂蘭盆バージョンの応接間で日がなゴロゴロして一日が終わって行く。大抵大人たちは三時くらいになってくると船を漕ぎ始め、小さな寝息が聞こえる中、私とはるなが古いアニメの一挙放送をぼんやりと観て過ごすのが我が家のお盆のテンプレートである。ピントのぼやけたレンズみたいなこの時期の空気感は、決して嫌いじゃない。
キッチンの方からいい匂いが漂ってくると、一度は解散したはるなたちがちょうどやってきた。きっともうすぐ、魔女の田舎料理が運ばれてくる頃合いだ。
小皿に盛っておいた料理を仏壇に並べて、お線香に火を付けてチーンと鈴を鳴らす。母も祖母も、もう帰ってきているのだろうか。
死んでからもこんなにおいしいごはんが待っているなんて羨ましい。手を合わせて、「おかえりなさい、どうぞ召し上がれ」と心の中で呟いた。
※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。