うちには魔女がいる(連載26)


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矢代羽衣子さんの『うちには魔女がいる』は平成二十六年度日本大学芸術学部奨励賞を受賞した文芸学科の卒業制作作品です。多くの方々に読んでいただきたいと思います。



矢代羽衣子

うちには魔女がいる(連載26) 

 
   あとがきに寄せて

一月の深夜に、はなの小さなイビキを聞きながらこれを書いている。朝はまだ遠い。


ハーブ大国のドイツでは、ハーブや薬、料理などに詳しい女性を魔女と呼ぶらしい。見るともなしに見ていた旅番組でそれを聞いた時、「あ、うちにも魔女がいる」と思った。
そういえば庭でハーブを育てているし、よく鍋で何か煮ている。それに、あの人の料理を食べるとやさしい気持ちになるのだ。

母が死んでもう十五年経つ。私は六歳で、魔女はまだ二十三歳だった。
私は昔から、それこそ母が生きていた頃から魔女のことが大好きだった。祖父と喧嘩をして母が私を連れて家出をする時、寂しくて魔女と抱き合って二人で泣いた。
だから母がいなくたって父が忙しくたって、魔女がいれば私は寂しくなかった。ちょこちょこと魔女の後を追っては、彼女の名前を嬉しそうに呼んでいた。
それは幼い頃の幸福な記憶であるが、同時に成長するにつれてほろ苦い思いを私に植え付けた。
二十代前半で、きっともっとやりたいこともたくさんあっただろうに、小さな子どもを抱えた魔女はどんな時だって私の手を迷いなく握り返してくれた。そのぬくもりに、何度掬われてきたのだろう。


絶対に離れるなんて無理だと思っていたけれど、結局私は十八の時に家を出た。大学進学のときはお互い寂しさと不安で何度もぶつかり、それでも最後は応援してくれた。
甘えたで魔女離れができなくて、ろくにバスにも乗れなかった私が、いまでは都内で一人暮らしをして、電車を乗り継いで新幹線のチケットを取って、大阪にひとりで旅行したりしているのだから信じられない。
誰もいない部屋に帰るのはいつまで経っても慣れなかったし、添加物だらけのコンビニ弁当は体にやさしくなくて何度も泣いた。そして少しだけ、大人になった。

私はこれからあのやさしい人に、何を返せるのだろうか。今までもらってきたあたたかくてやさしいものを、少しでも魔女に渡せているんだろうか。



親愛なる魔女へ。
あなたがいるから、私はいまここに立っているのです。
どうかいつまでもお元気で。



姪であり、一番弟子のウイコより。



  


※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。