どうでもいいのだ──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載45)

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どうでもいいのだ
──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載45)


清水正



わがままな性格


 わたしの性格はわがままで、五十七歳で死んだ母親には、よく「おまえのような者は、山奥で一人で住むしかない」などと言われた。母親は自分の腹を痛めて子どもを生んでいるから、その性格などはお見通しである。曲がりなりに社会生活を送っているから、それなりに妥協もするし、頭も下げる。が、自分の思いを曲げることはない。やりたいことはやり通す。とうぜん抵抗もあり、葛藤も生じ、ストレスがたまる。
 もともと自己主張が強く、中学時代には理想主義者とも言われた。受験勉強に没頭する前に、なぜ勉強するのかを考える子どもであったから、教師にとってはやっかいな生徒であったろう。別に教師にどう思われようがどうでもいいと思っていたし、第一、尊敬できるような教師は少なかった。
 一人だけ、生徒に日記を書くことをすすめ、提出した日記に感想を記して返す担任教師に好感を抱き尊敬もしていたが、その教師も「動物を可愛がるとはどういうことか」というテーマで書いた日記には感想を記すことはなかった。
 当時、わたしはすでに宮沢賢治が童話で問題にしていた弱肉強食の問題に直面していた。テレビや新聞の次元での善悪観念がいかに根拠のないものであるかを覚った。その後、「万物は繰り返す」を書いてわたしは必然者としての自覚を持った。世界の秘密がことごとく解けたと思った瞬間、目の前が真っ白になった。
 観念の世界に生きる少年にとって、現実世界での出来事はまさに俗事に属する。俗事の煩雑さがやりきれない。人間は呼吸や食事や排泄をしなければ生きていけない。もし人間が肉体なしに生きていけたらどんなにか幸せであろうと思った。人間は霞を食べて生きていくことはできない。とうぜん、生活の糧を得るために働かなければならない。働くということは、煩瑣な人間関係の渦の中に巻き込まれることを意味する。
 ただ生活するためだけに生きているような者がいる。
 中学時代、生徒会に所属し、学力テト反対運動に関わったことがある。テストの点数だけで生徒を評価することを、教育の現場で受け入れてはならないと考える教師がおり、彼らは学力テストを推進する文部省の方針に真っ向から反対した。一人の教師は、教育委員会に呼び出され、その席で「きみもまだ若いんだから、行動は慎んだほうがいい」などと言われたことを、わたしたち生徒会のメンバーに正直に伝えた。教育に情熱を持ち、学力テストに反対して提灯デモまで行った教師たちは、他の中学へ配属された。分断政策がまんまと成功し、学校は何もなかったかのように秩序をとりもどした。
 この騒動があったとき、わたしはある教師に学力テストをどう思うかと質問したことがある。その時、この教師は臆面もなく「ぼくには妻も子どももあるので」と言ってそそくさと逃げ出した。どんな組織でも、こういった人間が大半を占めている。
 学力テストひとつ取ってみても、国家権力の強大さを思い知った。反対する教師たちの運動は押さえ込まれ、団結していた教師たちは分断され、孤立化した。当初、学力テストに反対していた生徒も、いつの間にか受験勉強にのめりこんでいった。わたしは受験のための勉強はせず、ひたすら自分の思いを深めていった。それは基本的には今でも続いている。
 




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