星エリナのほろよいハイボール（連載114）
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星エリナのほろよいハイボール（連載114）
夜中に練習する
星エリナ
田舎ほど、生活に車が必要になる。都会ほど、公共交通機関が発達しているから車がいらない。確かに田舎の家って駐車場が多くて、一家に車が三台くらいあるイメージ。そのうち一台は軽トラ。
私が住んでいる埼玉県の地元は、都会っちゃ都会。田舎っちゃ田舎。駅前は栄えているし、ショッピングモールも賑わっている。年に一度のお祭りも盛大だし、最近では観光地化が進んでいる。だけど、栄えている駅の隣の駅はもう田舎。少し行くと無人駅だし。夏に青春18切符で旅に出たとき思ったけど、同じ市内でもすぐに畑ばっかりになる。ま、でも、そんな地元が大好きなんだけど。
そんな地元だから、時々車が必要。バスも電車もあるけれど、車がないと行けない場所もある。だから私は大学一年生の夏休みに車の免許を取りに行った。本当は兄弟で教習所に通うと割引があったからなんだけどね。その頃の私と言えば、えっと……何もない。確かにサークルには入ったけれど、原稿を家で書いて送ればいいだけだったし、ちょうど何もバイトしてなかった頃だったからね。彼氏もいないし、楽しみといえば当事ハマっていたロックバンドのライブくらい。でも、ライブなんて月に何回もあるわけじゃないから、正直言うと暇だった。暇な夏休みを教習所通いに費やした。だって大学の夏休みってすごく長い。約二ヶ月。あんなに学費払ってるのにね。
「大体、学科試験と実技試験あわせて、三ヶ月くらいかな」
って受付のお姉さんは言っていた。それから埼玉県は鴻巣市へ向かい、免許センターで試験を受ける。
そう言われていたけれど、私、八月から講習を受け始め、九月の下旬にはすでに免許を手にしていた。実際入所手続きをしたのは七月の下旬だったけれど、ほぼ二ヶ月以内に取れてしまったのだった。なぜなら、暇だったから……。
週四日以上通い、実技は一日二時間。時には間に学科を二時間挟んでまた二時間。お昼ご飯は教習所向かいのラーメン屋さん。四人がけの席に女子一人で座ってラーメンを食べた。また、少し時間が空いてしまったときには教習所から徒歩三分のところにあるレンタルビデオ屋で暇つぶし。実技の教官もどうやら私がすごくやる気のある子だと思ってくれたようで、時間がある時にはわざわざ電話してきて「今日、5時から乗れるよ！」と教えてくれた。
学科試験も実技試験もスムーズに行き、ほぼ最短の二ヶ月で私は教習所を卒業した。あれから三年。ちょくちょく運転はするんだけど、正直全然上達しない。アウトレットへ買い物に行くときは三十分ほど運転するのだけど、大通りをずっとずっと真っ直ぐ運転するだけ。もう少し運転、頑張りたいなーと思っている。来年度からは運転する機会はほとんどなくなっちゃうからね。
そんな私にとって練習になるのは、兄、父、母を迎えに行くこと。兄は働き出してから会社の人と飲みに行くことが増えた。「迎えに来て〜」なんて連絡が来ると、面倒臭いんだけど、練習になるからちょっとやる気になる。でも最近は帰りがすごく遅いから、深夜0時過ぎに運転することもある。駅まで行く道はもうほぼ完璧。たまには別の道を練習したかったりするのだった。
高速道路の運転をまだ二回しかしたことがないから、この冬はちょっと練習できたらいいな、と思っている。でも、今後その練習の成果が発揮されることはあるのだろうか。継続は力なり。でも、継続はできないから力にならないね。
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