小林リズムの紙のむだづかい(連載503)


清水正ドストエフスキー論全集』第七巻。2014年7月31日刊行。D文学研究会発行・星雲社発売。A五判上製585頁。定価7000円+税



清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックジャパンで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

小林リズムの紙のむだづかい(連載503)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。


清水正の著作はここをクリックしてください。

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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムさんがエッセイ本をリンダパブリッシャーズ(http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru)から刊行することになりました。本のタイトルは『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった八日で辞めた話』発売日四月五日。
http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru
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小林リズムの紙のむだづかい(連載503)

【夢見るフリーター生活を振り返る9】

 

 自宅から三駅離れた駅の改札口で彼と待ち合わせる。久しぶりに会うと、「あれ、この人こんなにかっこよかったっけ?」と思ってびっくりした。もちろんそんなこと言えるわけもなく「変わってないねー」なんて言葉で緊張をカバーする。近くの居酒屋に入って生ビールを頼んで一息つくと、強張っていた気持ちはいくばくか落ち着いた。
「そういえば、今は何やってるの?まだ役者は続けてる?」
 私がジョッキを傾けてぐいっと煽ってから聞くと、彼は笑って動画を見せてくれた。
「うん、バイトしながら続けてるよ。ほら、これはこの前の舞台のやつなんだけど……」
 こうやって無邪気に夢を語ったり、楽しそうに教えたりしてくれるところが好きだった。見栄っ張りでプライドの高い私は、誰かに自分の夢や目標を伝えるのをためらっていたから、彼のその堂々とした姿を尊敬していた。なにせ私は夢追い人が好きなのである。これまで恋をしてきた相手も、小説家を目指している人や、起業をしたいと語る人、職業不明な自由人っぽく見える人などわりと現実的でない生き方を好む人たちだった。友達からは「ダメンズばっか好きになるよね」なんて言われることもあったけど、私は彼らの見せてくれるキラキラした世界をどうしても共有したくなってしまう。
 彼は大学に入学した当初から役者を目指していて、疑うことなくずっとその道一筋だった。その姿勢は傍から見ると夢見がちにも思えた。
「リズムは? 書くのを仕事にしたいって言ってたよな」
「あたしは……今ニートになっちゃったけど、普通に転職先探そうと思ってるよ」
「それでいいの? 就職しなくてもバイトをしながら書きつづけるのでもいいんじゃない?」
 そんなのよくないに決まってる。いいもなにも、私はもっとまっとうで現実的な生き方がしたい。きちんと社会に認められる職種について、誰にもバカにされたり笑われたりしたくない。働かずに書いて食べていくなんてほぼ不可能だし、プライドばかりが高い私が社会の底辺に見られるフリーターを選べると思えない。感情がうまくまとまらずに、お酒のペースだけが速くなる。もう何杯目かわからないハイボールを傾けて言葉をにごした。
「……俺さ、アカデミー賞とるわ」
 は? アカデミーショー……? 彼の発した言葉の意味をすぐには理解できず、何も言えなくなった。この人は本当に、純粋なまま何も変わっていないのだ。同じ年の人たちが就職していくというのに、役者で食べられている状態ではないのに、私よりも一歳年上だからもう二十四歳になるというのに、少しの疑いもなく自分の夢を信じ切っている。いったいどこからその自信がわきあがってくるんだろう。正直、友達の元彼だったらバカにしていたかもしれない。「なんでそんな人と付き合ってたの?」なんて言ってしまいそうだ。だって、あまりにも単純すぎる。だいたい、夢を見ることにだって賞味期限があるはずだ。現実の自分の実力と上手に折り合いをつけないと……。
 冷静な私がいる一方で単純な考えと生き方に勇気づけられている自分がいる。彼のアカデミー賞発言は、私の心にあった何かを確実に変えた。つまりは、私もバカみたいに単純なのだった。そしてそんなタイミングを見計らったようにして、アイドルオーディション審査通過の連絡が届いた。



小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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