小林リズムの紙のむだづかい(連載387)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックジャパンで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

小林リズムの紙のむだづかい(連載387)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。


清水正の著作はここをクリックしてください。

http://d.hatena.ne.jp/shimizumasashi/searchdiary?word=%2A%5B%C0%B6%BF%E5%C0%B5%A4%CE%C3%F8%BA%EE%CC%DC%CF%BF%5D


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムさんがエッセイ本をリンダパブリッシャーズ(http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru)から刊行することになりました。本のタイトルは『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった八日で辞めた話』発売日四月五日。
http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru

日藝・江古田校舎購買部に平積みされています。

江古田購買部の小泊さん。お世話になっています。
http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru
小林リズムの紙のむだづかい

ブラック企業の基準値】




父の会社のお給料が遅配しているというのは、さほど珍しいことではなかった。たまにかけてくる電話で母がしょっちゅう愚痴っていたし、「お母さん、もう具合が悪くって。鬱が悪化しそう…」などと締めくくられるものだから、私は「大丈夫だって」と景気づけに無責任なことを言って励ましていた。
「心配したって、お給料出るわけじゃないんだから」
そう、まさにその通り。悩んだって心配したって、お給料が出るわけじゃない。自分で言った言葉に納得しながらも、でもそれで母の気は晴れるわけではないことは容易に想像できた。母が欲しいのは言葉ではない。彼女が求めているものは、穏やかでささやかな生活と、絶対的な安心感なのだ。母が心から安心する方法は、安定した仕事と収入源を獲得すること以外ほかはない。そしてそれは父のような夫をもった母には、永久的に無理なことである。よって、母はこれからも「もう、具合悪くって…」と言い続けることになるし、私もそれを聞き続けながら「悩んだってしょうがないじゃん」と言い続けることになるだろう。この一連の会話は、もはや定番のネタなのだ。鬱母と呑気な娘というある種のコント。ひっそりと暮らす母と、適当に暮らす娘の鮮やかなコントラスト…!

けれど、さすがに2か月もお給料がもらえないと聞いたときは爆笑してしまった。そんな会社があるということに驚いたし、それでも2か月働き続けている父にも感服だった。私の記憶のなかでは父はいつも残業をしていたし、休日出勤も当たり前だった。かといって会社に酷使されて疲れ切っているという様子はみじんもなく、鼻唄をうたいながら陽気に朝シャワーを浴びていたり、犬を散歩に連れて行ったりしているものだから、父のことを可哀想だと思ったことや気遣ったことは一度もない。父は、本当にお金なんてどうでもいいのだった。家族を守るためとか、養うためとか、そういう理由づけなしに仕事が好きなのだ。
そのしわ寄せを受けるのが母だ。母は父の「どうでもよさ」に対する仕打ちを引き受けて、逐一心配したりショックを受けたりしている。父の代わりに心配し、不安を抱える。もし母がいなかったら、きっと私や弟は大学を卒業できなかっただろう。父のスタンスでいくと「まあ、しょうがない」でなんでも済まされてしまう。

父が2か月お給料をもらっていない時期が延長していき、ついには3か月お給料をもらえていない時期にまで達した。けれどそこで15万円だけぽんと銀行に振り込まれたらしい。
「15万円って…バイトしたほうがよっぽど…」
と私は笑った。その金額が妙にツボだった。3か月で割ると、月5万。大学生のバイト代並みだ。母は朝から張り切って会社の雪かきに励みにいく父を「もう、お父さんが気の毒で…」としきりに可哀想がった。なんだか愉快だった。

残業代どころかお給料が出ない。それどころか社長が社員に借金をしているという始末。こういう会社で嬉々として働く父の娘として育った私は、そもそもがブラック企業に対する基準が低いのだと思う。正社員なら残業代なんかで出なくても当たり前、とか、それくらい保証してもらってるんだから、と思ってしまう。好きな会社や好きな仕事だったら、きっといくらでも働ける。父なんてもはや働くというよりボランティアである。





 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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