ユッキーの紙ごはん(連載29)

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ユッキーの紙ごはん(連載29)


【女子会の半分はその場のノリでできています】


ユッキー


 

先日、女子会があった。久しぶりに会う友達だった。
午後3時に2,3人が集まり始め、コーヒーを一杯飲んで他の友人を待ちつつ、全員揃ったら居酒屋へ。

始まるのは、恋愛の近況報告の嵐だ。「そっちはどうなの」「最近どうなの」「何かないの」
彼氏持ち、独り身、独り身なんだけどクリスマスイブは男と一緒に過ごした独り身もどき。それぞれの惚気や自虐が飛び交う。

「あ、外人のイケメンとどうなったの? 一緒に中華街行ったんでしょ?」

誰かが、一人の独り身にそう聞いた。問われた彼女は1年間留学していたことがあり、そこで様々な外人の友人ができたらしいが、そのうちの白人男性がイケメンすぎると私たちの中で以前話題になったのだった。
しかも彼は今日本で働いているというから、妄想激しい女たちは「国際結婚!」と本人を差し置いて騒いでいた。

彼女が見せてくれたイケメン写真は、青空と青い海をバックに、白人男性が少し眉を寄せた表情で立っているものだった。
CDのジャケットか何かかと思うくらい、色合いや、顔にかかる影が絶妙。
Now On Sale… とか白文字で書いてあっても違和感のない写真だった。

「ええ……別に。友達だよ、普通に」

彼女が答えると、ブーイングが飛んだ。「なんで」「もったいない」「そういう可能性は全然ないの?」

「じゃあ私に紹介してよ」「白人!イケメン!」「あんなイケメン、きっと私ドキドキして話せない」「付き合いたい!」
声は止むことがない。安い居酒屋で行われる女子会は往々にして下劣だ。「女子会」の名が泣く。

彼女はブーイングに律儀に答えた、「だって彼、秋田県で働いてるんだよ。遠すぎる」……そして格言を残した。

「遠くのイケメンより近くのフツメンだよ!」

おお……と驚嘆の声を控えめにあげ、観衆は静かになった。納得せざるを得ない。

恋愛ってままならない……と呟きが聞こえた。
 声の主は、付き合って3年になる彼氏と最近になってケンカが増えてきた女だったか、彼氏にスマートフォンのパスワードを解かれて中を見られ揉めた女だったか、クリスマスイブを一緒に過ごした男友達とこたつを共にしたことを後悔している女だったか、合コンをセッティングしてくれと男友達に頼まれるも「お前は来なくていい」と拒まれた悲しい女だったか……。あ、最後の女は私だから違うか。

しかし女達は懲りない。
「あ、じゃあ近くのフツメンで良い感じの人が見つかったってこと?」と、格言を残した友人に聞いた。

ちょっと照れ臭そうに笑い、近くのフツメンとのあれこれを話す彼女。
「おお!」「いいね!」「付き合え!」再び沸きあがる観衆。

しかし彼女は一通り話したあと、「でもね」と渋い顔を見せた。

「その人、パチンコ好きなの。許せなくない?」

うーん……と呻き声をあげ、観衆は再び静かになった。
恋愛って、ままならない。


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