ユッキーの紙ごはん(連載23)
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【負け癖のついた人生ですが】
ユッキー
知人に、恋愛経験豊富な女性がいる。自分で「ゲス話」といって笑いながら生々しい話をする彼女は美人でおしゃれで、私はそのギャップにたじたじ、そしてメロメロ(死語)。
先日、彼女が今話題の「矢口真里」状態になったときの話をしてくれた。彼氏ではない男性と過ごし、部屋で寝ているところに、彼氏がやってきたという。
「どういうこと?」と聞いてくる彼氏。しかし彼女は、夫のDV問題を盾にして保身を図った当の矢口さんよりも、潔かった。
「そういうことだよ」
そう答えて二度寝した、らしい。
すごい。すごすぎて、なぜか最低なことをしているように思えない。
しかも結局、彼氏は「俺は好きだから仕方ない」といって浮気を許してくれたというから、もう本当にすごい。あまりの衝撃に、ただでさえ貧しいボキャブラリーが更に痩せ細る。すごい。やばい。
知人女性にひととおり尊敬と驚愕の眼差しを捧げたあと、その彼氏の立場になって妄想してみた。
彼氏の家に行ったらどう見ても浮気している、となれば怒りで頭の中が真っ白になる。
「どういうこと?」「何してるの?」 説明が欲しいとか謝罪が欲しいとかそういうわけではなく、何も考えずそう聞いてしまうと思う。火傷してとっさに「熱っ!」と叫ぶのと同じ、反射でそんな質問を口にしてしまう。
「そういうことだよ」「見ればわかるだろ」
そうして返ってきたのがこんな反応だったら、多分、怒りは全て悲しみに変換される。そうだよね、見ればわかるよ。私、なんて言ってほしくてこんなこと聞いたんだろう? と自分がばかみたいに思える。きっと。
相手を最低だとかクズだとか思う感情よりも、自らを惨めで無価値だと思う感情が勝るだろう。
もしも浮気されて問い詰めて、「そういうことだよ」と開き直られたとき。別れを選択するか、鈍器などで攻撃しやっぱり別れ(この場合、今生の別れとなる。南無)を選択するか、どちらかをすぐにできなかったとしたら、それはもう「負け」だ。惚れたほうが負けって、そういうことだと思う。
悲しませた人間が「勝ち」。
恋愛だけじゃなく、人生もそんなルールな気がする。
だからムカつく人間がいたら、そいつを勝たせないためにも、いつまでも悲しんでいてはいけない。
悲しませた人間は判定では勝利確定だけど、そんな相手に対して自分の力で笑えたなら、KO勝ちで一発逆転! なんてね。
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