小林リズムの紙のむだづかい(連載113)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

小林リズムさんが「ミスID」2014にセミファイナリスト51人中に選ばれました。リズムさんが「ミスID」2014に選ばれるように応援しましょう。
http://www.transit-web.com/miss-id/


紙のむだづかい(連載113)
小林リズム

スクール水着を切り刻む】

 小さい頃からわたしは大人になるのが嫌だった。それは主に身体に関することで、胸がふくらんだり、生理になったり、「男の人には気をつけなさい」なんていふうに性的対象になることが嫌で嫌でたまらなかったのだった。だから、小学校中学年になったとき、母が気をきかせて買ってくれたスポーツブラもつけて学校へいくのに抵抗があって、タンスの奥にずいぶんと長い間眠っていた。

 学校の水泳の授業を休むときに「生理なので」と先生に報告するのも、考えられないくらいの辱しめだったし、それ以前に生理になったことがまずもう、屈辱以外のなにものでもなかった。まわりの子がなんであんなに早く成長したがるのか不思議で仕方なくって、「あ、ナギサちゃんが大人用のブラジャーつけてる!」「わぁ、かわいい!」みたいな会話も理解できなかった。むしろナギサちゃんを「あぁ、大人になっちゃうのね」と可哀想な目で眺めていたと思う。

 だから、学校のスクール水着が小さくなって「ちょうどいいのがあるから」と母から大人っぽい競泳用のスクール水着を受け取ったときは、途方に暮れた。なんと、胸に分厚いパッドが入っていたのだ。そのとき小学生だったわたしはブラジャーさえつけていないし、胸なんてほぼなかったし(まあそれは今もないのだけど)、分厚くて形のクッキリとしたパッド付きのスクール水着を自分が着用するなんてありえなかった。けれど、それを母に言うのも気が引けて、わたしはしずしずとプールの授業でそれをつかったのだった。
 案の定、ずいぶんとサイズの大きいそれは、子どものわたしには不恰好で、胸だけパカパカ浮いていて明らかにおかしかった。同じクラスの友達に「パッドだ!」と言われたときはもう、恥ずかしくてこのまま死ぬんじゃないかと思った。
 
 あまりにもパッド付きのスクール水着が嫌で、家に帰ってから母に抗議した。「やっぱりこのパッドいらない!ほかの水着がいい!」と。対して母は「なにいってるの?そんなにいくつも水着買うなんてバカみたいでしょう。それくらい気にしないで着なさい」の一点張りで絶対に譲らないのだった。さんざん悩んだ挙句、わたしの出した答えは、「スクール水着からパッドを切り取る」という強行手段だった。

 ハサミを取り出して、スクール水着の胸の部分をめくり、憎きパッドをジョキジョキと切ったあの手の感覚は今でも覚えている。母は怒っていたけれど、切ったことにわたしは後悔なんてまったくなくって、ベコベコのパッドをつけて水泳をするくらいなら裸で泳ぐわ!という勢いだった。ふつうならば「乳首が透ける>パッドが大きい」という恥かしさの基準なのだろうけど、当時のわたしは「パッドが大きい>乳首が透ける」が恥かしさの度合いだった。というより、大人の身体になりたくなかったのだよね。
 あの競泳用水着は結局どれくらい着用したんだっけ。そこらへんの記憶はまるでないのだけど、今でもぴったりとフィットしない水着とかブラジャーは好きになれず、ノーブラが流行っていた時代を羨んでいるのだった。
 
小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
http://ameblo.jp/nanto-kana/

twitter:@rizuko21


※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。