小林リズムの紙のむだづかい(連載114)

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紙のむだづかい(連載114)
小林リズム

【温泉でおもらし】
 

 「りっちゃんって、温泉で便をもらしたことあったよね」
と母が言ったことがあったので固まってしまった。温泉で…もらす…?とてもじゃないけれど、自分の人生でそんな出来事が起こったなんて、信じられない。
「え、ないから、そんなこと」
と全力で否定するわたしに母は自信満々に言い放つ。
「あったのよ。忘れちゃったの?」
…そんなこと、忘れるわけがないのだった。

 その頃わたしは3歳だとかで、それくらいの年齢の子はみんなだいたいが無垢で純真で天使のようで、もちろんわたしも例にもれず可憐だったのだ(たぶん)。
 あの日は確か祖母と母と温泉に入っていて、とにかくのぼせるくらいに暑かった気がする。暑いとなんだか腸も活発になってきて、もちろん幼かったから思いを言語化する術もままならず、とりあえず本能的だった。だから髪の毛を洗い始めた母をみながら、もらしてしまったのだ。あいまいな記憶で、映像もぼやけていて、ほとんど幻想のように嘘みたいな出来事だけれど、たぶん本当にあったんだと思う。

 でも、そこから先が思い出せない。
「…あのあとさ、もらした便はどうなったの?」
「あぁ、それはね…、おばあちゃんが便をわしづかみにして排水溝につっこんだ」
…。おお、ジーザス。信じられない…。
「…それって問題あるんじゃないの?」と聞くわたしに、
「だって、そうする以外ないじゃないの。トイレなかったんだし」
 と祖母が勝ち誇った顔でのたまうので、わたしは恐れ入ってしまったのだった。予測さえできなかった状況でも冷静に物事を判断し、迅速に処理する祖母…。たぶんそのときは50歳そこそこだったと思うのだけど、なんたる貫禄。自分のだって嫌なのに、人の便を握りつぶすなんていうそんなレアな経験、わたしは一生できなくていいや。
 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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